講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.リノベーションスクールでの学び
宮崎:  HAGISOを始めた頃はお金がなかったので、ここに嫁と一緒に住みました。風呂がないので銭湯に行き、近所の色々なお店に食べに行ったりもしました。すると街中に自分の空間が分散している感じがして、広々と暮らせるんですよ。家そのものは狭いけれど、窮屈とは感じなかった。僕の出身地の前橋市では、国道沿いのショッピングモールに行くような生活が一般的ですが、それとは対極的な生活です。
2015年11月からHANAREという宿を始めたのは、こうした生活を色々な人に体験して欲しいと思ったからです。まず企画書を書きまして、レセプションがHAGISOにあり、別の建物に泊まって、近所の銭湯を大浴場として使うというシナリオを作りました。宿泊用の建物を探し始めて半年ほど経った頃、100mくらい離れた場所に第二丸越荘という感じの良い空きアパートを見つけました。登記簿を調べたら、福井市在住の30代の方が所有者です。手紙を送ったところ、持て余していることが分かりました。祖母から相続したので売却するのは気が引けるけれど、改修してアパート経営するにはリスクが大きく、ただ固定資産税を払っている状態だったんです。
手紙を読んで東京まで来て下さったので、この辺りをご案内しました。歳が近いのでざっくばらんに話をして、僕が初期投資するので宿泊用のリノベーションをしてみないかと持ちかけました。具体的には、前払い家賃制度で10年間の定期借家契約を結びませんかという提案をしたんです。10年分の家賃の7割ほどを先に払い、その収入で大家さんが改修工事を行うわけです。すると所有権は大家さんのままで、僕たちが賃借して宿を経営できるようになる。僕たちは初期投資が必要ですが、10年間で考えると家賃は相場の6割くらいに抑えられます。
松村:  本を一冊読んだだけで、ここまでの事業計画がよく立てられましたね。
宮崎:  北九州で行われているリノベーションスクールのおかげです。ユニットマスターとして参加する僕たちにとっても得るものは大きいんですよ。様々な分野のノウハウを学べますから。実際、HANAREを企画したときには、リノベーションスクールを通して学んだことを存分に活用させて頂きました。



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