まちの新しい文化が生まれる場としての本屋さん
今回の石井さんのお話で特に印象に残ったのは二つ。一つ目はブックカフェを始めたいと思って、先端を行くアメリカ西海岸の有名店をことごとく見て回ったというお話。新しいライフスタイルが気になったり、それを実践してみたいと思ったら、地球規模で軽々と行っちゃうという乗りに、現代らしさとその可能性を感じます。そして、そういう西海岸の有名店はすべて築50年以上の建物の中にあるという事実を発見し、自分のふるさと、うきはで開業することにしたという経緯も興味深いものでした。まちの中の空き家や空きビルの利用がごく普通の態度になりつつあること、時代の変化の風が確実に吹き続けていることを再認識させられました。
二つ目は、まちなみ保存の伝建地区からは新しい文化は生まれないという石井説。これはあまり考えたことがありませんでしたが、先ずそうだろうなと思います。継続性と変化や変革。これは大学の研究者にも当てはまるような普遍的バランス問題です。あまりに過去を顧みずに破壊と建設を繰り返すことへの反省や危機感から出てきた歴史的建物や街並みの保存ではありますが、まちの全体がそうそう建て替わらず、その中での人々の暮らしが変わっていく今日的状況の中では、何かもっと中間的な構え方もあって良いのだろうと思わせられる石井説でした。
私たちのこの頁のタイトル「ライフスタイルと住まい・まち」に誠に相応しい刺激を頂きました。
(松村秀一)
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