講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8.東京R不動産のノウハウとは?
佐藤:  先ほど契約の話が出たので伺いたいのですが、賃貸でも壁を塗ってもいいとか、入居者が建物に手を加えることに関してどのように契約しているのですか?
馬場:  その辺は契約書を工夫しています。やはり事故があると大変ですから。気が付くともの凄いパターンの契約書の雛形が蓄積されていて、今となってはそれがノウハウになっています。

例えば、住み手の改造については「新たな原状」という考え方を導入しています。改造しちゃったら原状復帰義務を果たすことは無理ですよね。ですから改造したらそれを新たな原状と定義して、契約書でちゃんとOKにするんです。
松村:  新たな原状を両者で認め合うわけですね。
佐藤:  ということは、契約書を作成するときに、例えば「ここを白く塗っちゃいます」とか決めておく必要がありますよね。その辺はどうされているんですか?
馬場:  初めの契約では簡単な図面などで「ここを塗ります」というように示しておいて、工事後にトラックバックして契約書に別添資料として写真を添付したりします。要はビルオーナーと入居者がお互いに納得していればいいわけですから。
佐藤:  他の引き合いがないような物件でしょうから、契約をすぐ決める必要もないんでしょうね。だから、図面などを書く時間的余裕があって、入居予定者とビルオーナーがやり取りする余地もある。
松村:  だけどあれでしょ、オーナーがずっと回転させようと目論んでいる物件だと、変に触られると次に回転させようとする時に支障が生じますよね。例えば、2年で出て行った後に、また募集をかけることを考えると、普通の賃貸マンションじゃ、そりゃやんないわけですよね。
馬場:  特殊な物件だからこそ可能な契約でしょうね。
松村:  オーナーの反応はどうですか。喜んでいるんですか?
馬場:  喜んでいる人が多いんじゃないですかね。全く引き合いのなかった空き物件が、東京R不動産に載った瞬間にバタバタッと入居者が決まったりしますから。そもそも物件のポテンシャルに気付いてないので、何が起こっているんだろうとキョトンとしているオーナーさんもいます。
鈴木:  それまでと状況が一変したわけだからね。
馬場:  まぁ、やはり保守的でしっかりした方が多いですね、ビルオーナーって(笑)。それを何とかなだめすかしている東京R不動産の営業スタッフは人間力があるなって思います。
佐藤:  すると、そうしたオーナーに応じて契約書の雛形ができるような感じなんですね。
松村:  オーナーの考現学で本が書けそうだね(笑)。



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