講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.明石大橋が見える生活

鈴木 この大きなガラス面のそばでずっと海を見たりすることはあるんですか。
中田 ありますね。朝見たり夜見たり。淡路島の影響で潮の流れが変わるんです。朝は東から西へ、夜は西から東へと潮が流れる。そんなのを見たり、空気の重たい日は明石大橋が霞んで見えたり。嵐の日には海に雷が落ちるのが見えたりとか。それこそいろんなものが見えて、楽しいです。
松村 それは普通の窓だとしない行動ですね。いくら景色がいいからって窓際に行ったりはしませんから。たたずむっていう大きさではないですからね。
中田 朝は車の音とか電車の音とか少ないので、波の音だけが聞こえます。夜はライトアップされている明石大橋の下の真っ暗な海を釣り船が行き来したりしている。そんなんを見ていると確かに、ストレスはとれますね。
西田 明石大橋が日常的な風景になっていると思うんですけれど、愛着みたいなものはありますか。もともと住んでいるから愛着があるとか、ここに住み始めてからもっと愛着が大きくなったとか。あるいはこの地域に対する愛着が湧いたとか。
中田 僕は生まれが淡路なんですよね。北淡町の野島断層のすぐ近くで。
鈴木 それでは、身近なものだったんですね。こういう景色は。
中田 子供の時からこんな感じでしたね。ただ、子供の頃は神戸と淡路がとても遠かったんですよ。船に乗って一時間くらいはかかってしまう。ですから、やっぱり橋ができてうれしいことは確かです。まあ、この風景を見ていても、橋そのものには愛着はないですけど、向こうに見えるあれが故郷だっていう気持ちはどこかにあるんでしょうね。
西田 日本って島国じゃないですか。だから、歩いてすぐのところに海があったりするわけですが、実はあんまり意識していない。これは僕の話になってしまいますが、新潟に住んでいた時にそれを強く感じたんです。というのは、海のすぐ近くに住んでいたので夏は海パンのまま歩いて泳ぎに行くことができたんです。

もちろん、山と暮らしている人も多くいらっしゃるけれど、海といっしょの暮らしというのは生活の原点みたいなところがあるなって感じたんですね。中田さんは淡路島という原点に吸い寄せられたのかなって思ったりしたのですが。
中田 みんな海に近い所に住んでいるはずなんですよね。でも、いざ家探しをするとなると海のそばって敬遠しますよね。洗濯物が乾かないとか、布団が干せないとか、物が錆びるとか、ネガティブな面が気になるんでしょう。僕はずっと海に近かったからか、そんなに嫌やなとは思っていないのは確かですね。
鈴木 今日は西舞子駅から歩いてきたんですけど、倉のある家などが残っています。漁村の原風景というか、海とのダイレクトな関係が感じられる環境ですよね。
木多 でも、この家はどうでしょうか。さっきからココにいて思っていたのですが、海とダイレクトな関係というより、海と隣接している切り取られた空間で、景色はいただくけど空調もしっかり効いていて、いいところ取りかなって。あそこに見えるバルコニーがある住宅は潮風がダイレクトで暮らしたくないけど、こっちならいいかなって思うところがあるんですよね。
鈴木 外部空間を家のどこかに組み込むというのは考えなかったんですか。テラス的な空間を設けるとか。
中田 なかったですね。男の人ってあんまりバルコニーを使う機会がないですよね。僕は学生の頃から洗濯物も部屋の中で窓際に干していたので、バルコニーが欲しいとは思わなかったですね。
鈴木 例えば、お茶飲んだり食事したりとかは。
中田 そういう希望はなかったですね。そういう時はそれこそ外に出るかっていう感じですから。



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