人口減少/少子高齢社会における
イノベーティブな次世代まちづくり

(3) 上郷ネオポリス「既存宅地の売却と空き家化」

 以上の日本の社会的文脈を背景に、大和ハウス様との協働による、横浜市栄区の上郷ネオポリスで行った調査についてご報告いたします。
 上郷ネオポリス自治会とまちづくり協議会が2017年に実施した第1回全戸アンケート調査を分析しますと、将来「住み替えたい」割合は50歳代が最も高く、60歳代で「住み続けたい」割合が急激に高くなり、それから年齢が高くなるほど「住み続けたい」割合が高くなります。これは他の住宅団地の調査においてもほぼ同じ結果となっており、世代というより年齢層による特質ではないかと考えられます。上郷ネオポリスの年齢構成は60歳以上が大半で、これからの10年間が勝負になると考えられます。
 これから上郷ネオポリスにおける土地・建物の相続が大量に発生すると考えられますが、相続された土地・建物がどのようになっているかを見てみますと、特に子供への相続が売却につながりやすいことが分かりました。2018年に東大と明治大学が共同で行った第2回全戸アンケート調査では、子供が土地・建物を相続した場合、「自分または家族が住む」と回答した方が37%、「売却する」と回答した方が25%でした。また「わからない」と回答した方が37%で、この方々が実際に相続発生時にどうされるかが大きなポイントになると考えられます。
 上郷ネオポリスにおきましても空き地になったところに新たに住宅が建てられたり、相続が発生して住宅が売却されたりというところもあり、そこには新しい方が移り住んでおられます。どこから移り住まれたかを見てみますと、同じ栄区内や横浜市内が多く、ローカル化した転入が多くなっております。つまり昔は色々なところからの転入でしたが、その動向が変化し、現在は周辺に住んでおられるなどで上郷ネオポリスのことを知っておられ、その価値を理解しておられる方々の転入が多くなったと考えられます。転入者の従業地のローカル化も進んでおり、自宅や栄区、横浜市で働く方が増えています。転入者の年齢層を見ますと、60歳以上の元気な高齢者の転入が相対的に増えていますが、実は60歳以上夫婦世帯の住み替えは持ち家からが多く、転入先の敷地面積を見ますと皆さま250m²以上の広い敷地に住み替えておられます。つまり上郷ネオポリスは、持ち家に住んでいたけれどリタイアなどを機に、自然環境や庭などの生活空間がある程度以上の水準を持っている、ステイタスのあるところに終の住処として住み替えたいという、住環境にこだわりの強い層をひきつける、ローカルな社会の中でのブランド性を持っており、ここにマーケットがあると考えられます。
 子育て層の転入もローカル化されていますが、転入前の住まいは半数以上が借家で、転入先は小規模宅地を含め幅広い敷地面積となっております。
 先ほど用途の多様性ということを申し上げましたが、郊外住宅地の場合は、敷地割の多様性により、異なる住宅タイプや住宅機能・性能が適切な形でミックスされていることが、多様な居住者をひきつけるポイントと考えられます。