人口減少/少子高齢社会における
イノベーティブな次世代まちづくり

(2) 日本社会の文脈

① 空き家・空き地の発生

 日本は人口・世帯数の両方が減少する社会となり、世帯数の減少と総住宅数の増加に伴って、2033年の空き家数は約2,166万戸、空き家率は30.4%になる見通しとなっています。首都圏1都3県は他県と比べて空き家率が低いように見えますが、神奈川県横浜市や千葉県において空き家率の高いところは発生しています。
 私の研究室で行った、千葉県佐倉市における、世帯の減少がみられる郊外戸建て住宅団地を対象にした調査では、空き地が1996年の7件から、2011年には23件に増加しました。空き地の管理状態を『雑草繁茂』『管理済み』『対策済み』『庭・菜園・空地・更地』に分類し、所有状態を空き地の最後の登記理由から『放置』(居住地と空き地の住所が同じ)『企業所有』『近隣者所有』『相続』『住所移転』に分類して、両者の関係を分析しましたが、所有状態による管理の差ははっきりとはみられません。ただ、近隣者が所有している空き地は有効活用されています。

② 高齢化

 都市化に伴う高齢化は全世界で進展していますが、その中で日本は今や高齢化のトップランナーです。2020年までに沖縄を除く全都道府県で高齢化率は25%を超えると予測されています。東京、愛知、大阪などの人口集中地域においても2040年には30%を超えると予測されています。そして今後の高齢者の量を考えますと、特に大きな人口を擁する大都市圏において高齢者数が増加し、大都市圏への大きなインパクトになると考えられます。
 このように高齢化が進む中で、自分が要介護になった時に「どこで」介護を受けるかについては、厚労省調査によると、7割以上の方が自宅での介護を希望されています。ご家族の希望も同様です。高齢になってからの環境の大きい変化による心身への影響は大きいということが、自宅もしくは自宅近くや自宅に環境の近いところでの介護が希望される理由になっていると考えられます。

③ オールドタウン化

 日本の人口が急増した昭和40年代から大量につくられた公共施設の大規模改修や建て替えを今後40年間に進めるためには、これまでの年間投資の2倍以上の年間経費がかかるといわれていますが、これと同じことが民間施設においても起きると考えられます。コンパクトシティをつくるためには、これから投資を行うエリアはなるべく集約すべきという考え方があり、50年の長期的なタイムスパンでみますとそれは正しいと考えられますが、50年間に郊外に全く投資が行われないとなりますと、オールドタウン化した郊外住宅団地がバッドストックをたくさん抱えることになります。
 

④ 社会的孤立

 さらに日本には社会的孤立、若者の失業率、非正規雇用、マイノリティとしての子育て世帯 (子育て環境の劣化・ワークライフバランス・単親世帯の増加) といった問題があります。日本は、“サードプレイス”と呼ばれる、家庭や職場以外の場所での人との付き合いを持たない人の割合が極めて高いといわれていますが、これは社会的孤立の生まれやすい状況は関係していると考えられ、ライフスタイル自体の見直しが必要となっています。