柏プロジェクト
−住宅メーカーに期待するこれからの高齢期の住まい
1週間に1回しか外出しない人は、1日1回以上外出する人と比較しますと、歩行障害の発生リスクは4.02倍、認知症の発生リスクは3.49倍となります。
生活習慣病予防イコール介護予防イコール認知症予防と言われていますが、共通することは「閉じこもらないこと」、つまり社会性です。すまいとまちとの関係で言えば、出歩きやすい道路、木陰、ベンチ、出歩きたくなるイベントや地域社会が、個々の自立性を弱めない、高齢になっても安心なまちづくりになります。コンパクトシティ構想に見られるように、高齢者に安心して出歩ける地域構造がつくられたところが、地価が落ちないということになるのではないでしょうか。
ユニットケアを日本に導入した外山義氏による、6人部屋からユニットケアに移られた高齢者のタイムスタディによりますと、ユニットケアの個室に移ることで、かえって閉じこもりにはならずに、歩く歩数と会話量が増えたというデータが出ています。これは高齢者の在宅を進める政策が正しいということの裏付けになりました。
デンマークでは「生活の継続」「残存能力の活用」「自己決定」が高齢者ケア3原則になっていますが、その基本にあるものは「住まい」です。自分の住み慣れた住まいにおいて、生活が継続され、残存能力が活用され、最期まで住み続けたいという自己決定がなされます。
多くの高齢者は認知症となって、身辺のことが自分でできなくなり、病気となって、最期を迎えるというプロセスをたどりますが、小規模多機能型居宅介護は、1人暮らし高齢者の近くに住む娘さんの役割を果たすようなものと考えています。高齢者が日頃よく訪ねて来られる、訪ねて来なくなったら様子を見に行く、具合が悪くなったらお泊りしていただき、体調を整え、生活を調整して、もとの暮らしに戻っていただくというものです。1人暮らしの重い認知症の方を小規模多機能で対応することはできないため、施設が不要ということはありませんが、小規模多機能は施設から在宅に転換する基本形と考えています。
下の写真の方は脳卒中で倒れられ、筋力があるにも関わらず、1年10ヶ月寝かせきりにされていました。それがリハビリを経て車いすに載って、座位を保ち、家具のついた自分らしい部屋で暮らすようになると、自分の社会的生活を取り戻し、いきいきした笑顔を見せるようになりました。
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