柏プロジェクト
−住宅メーカーに期待するこれからの高齢期の住まい
東京大学高齢社会総合研究機構 辻哲夫特任教授
(1) 日本の高齢化−超高齢人口減少社会 (未知の社会) に向かっている
団塊の世代の高齢化により、2030年には日本の人口のおよそ5分の1、2055年にはおよそ4分の1が75歳以上になり、特に大都市圏で高齢者が急増すると予測されています。この超高齢人口減少社会をどう受け止めるかが日本の差し迫った大課題であり、思い切った政策を打っていくことが必要となっています。
団塊の世代は2030年には80歳以上の年齢になりますが、80歳以上高齢者における心身が弱った方の比率はとても高くなります。65歳以上の認知症有病率は5歳毎に累乗的に増加するものであり、90歳の認知症有病率は60%、95歳では80%になります。認知症高齢者は、介護保険制度が始まった2000年頃は、2025年に323万人になると予測されていましたが、現在は700万人から800万人になるのではと言われています。“認知症仕様”の社会システムが必要になっております。
さらに高齢者の多くは1人暮らしであり、1人暮らし高齢者が要介護になっても住み続けられる住まいづくりが必要になっています。大部分のサ高住における、要介護になると介護型居室に移すやり方も再検討が必要と考えています。
次図の秋山弘子氏による貴重な研究データを見ますと、男性・女性ともに70歳を超えると、虚弱な、自立度の低い方の比率がとても高くなります。さらにピンピンコロリは実はまれで、多くの高齢者は「基本的及び手段的日常生活動作に援助が必要」な状態になります。援助が必要になった高齢者は医療のケアも必要で、医療と介護の連携によりいかに高齢者の生活を維持するかという、極めて難しい課題に対処していくことが必要になっています。またこの図で示されているように、病気がきっかけになって自立度が大きく下がる高齢者は男性で約2割、女性で約1割であり、多くの高齢者は徐々に体が虚弱となり、自立度が下がっていきます。
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