講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.輪島土蔵文化研究会
佐藤:  能登半島地震をきっかけに「NPO法人輪島土蔵文化研究会http://www.wajimadozo.net/」が立ち上げられ、被災した土蔵の再生に取り組まれているとうかがいました。萩野さんがその理事長を務められているそうですね。地震でどれくらいの土蔵が被害を受けたのでしょうか?
萩野:  震災直後から輪島の建築家の高木信治さんや金沢でまちづくりをしている水野雅男さんらと共に建物の無料点検相談を行いましたが、そこで土蔵の被害が多かったことが分かりました。私も輪島にこれほど多くの土蔵があったことを知らなかったのですが、被害を受けて土蔵があぶり出されたという感じです。そこで久住章さんをはじめ日本を代表する左官職人の方々に調査に来ていただいたところ、多くの土蔵は修復可能であることが分かりました。しかし現実には、土蔵と倉庫を合わせると輪島市内で500棟を越えるものが解体撤去されてしまいました。と言うのも半壊以上の判定を受けた建物は公的補助によってタダで解体できたので、震災後に多くの土蔵が取り壊されてしまったんです。
大崎さんのお話しにもあるように、土蔵は輪島塗とも密接な関係にあるものです。そこで、建築に関わる人間として何かできないかという思いから、左官職人の方々とともに土蔵の再生活動に取り組むことになりました。
鈴木:  左官職人は能登の方でしょうか。
萩野:  全国各地の左官職人が係わっています。能登では技術のある左官職人は少なくなっていましたが、輪島の若い職人さんも参加しており、左官技術の伝承の場にもなっています。また、工事には多くのボランティアが手伝いに来るなど、様々な人が協力して土蔵再生に取り組んでいます。
佐藤:  定期借家による再生もあるとうかがいましたが?
萩野:  個人では受けられない公的補助をNPOで受けられる部分もあるので、取り壊そうとしている所有者を説得して回りまして、10年間無償で借り受け、NPOで修復・活用を試みようとしている土蔵がいくつかあります。



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