講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.日本の郊外はどこにある?
松村:  そうした観点から見ると、郊外はどのように捉えられるのですか?
横山(ゆ):  まずこの研究会では、日本の郊外をどのように定義されているのかお聞きしていいですか。東京でいえば、例えば山手線の外側でいいのでしょうか?
横山(勝):  本書では米国の「郊外」と「都市部」の犯罪率が比較されていますが、日本とは事情が随分違うように思いました。「都市からの脱出(Urban Flight)」と記していますが、インナーシティに低所得層の人々が集まり、そこから逃げ出して郊外に住宅地が作られる。つまり、インナーシティの犯罪問題が歴然と存在し、それに対して郊外は犯罪がより少ないという社会的文脈があります。

しかし、日本のインナーシティでは、公害で逃げ出すとか地価や物価が高いから逃げ出すという現象はあっても、犯罪で逃げ出すことはありませんでしたよね。ですから、犯罪からの避難場所として考える場合、どこをもって郊外と呼べばいいのか、ハタと困ってしまう。
松村:  それはもう皇居以外は全て郊外ということになります(笑い)。フランスのオーギュスタンベルクによると、ヨーロッパ的な意味での都市は皇居しかないということになる。お堀で囲われたエリアから一歩出ると、ヨーロッパ的な都市の原理はなく、いわば郊外となるそうです。そうすると東京は全部郊外となってしまう。
佐藤:  実は、今年度が始まるとき、鈴木先生や西田先生から郊外をどう定義するのかという質問がありました。僕は特に疑問を感じることなく、郊外というテーマを受け入れていたので、興味深かったですね。
松村:  前回、千里ニュータウンを扱ったとき、鈴木さんは千里ニュータウンは郊外じゃないとおっしゃっていましたよね。
横山(ゆ):  その場合何を基準にされますか?
鈴木:  僕は、郊外というと多摩や横浜などの茫漠と広がった場所がイメージされるんですね。千里は計画された住宅地ですが、梅田までは十数分ですから、ちょっと違うように思える。あくまでイメージの話ですが。



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