ライフスタイル考現行


2.G団地について

オリジナルへの増築

このようにして建設されたオリジナル203棟は、2004年つまり建設から約40年が経過した現在でも、82棟つまり4割強が何らかの形で残っている。あるものはほぼ当初のまま残っていたり、あるものは増築に増築を重ねて増築部分の面積がオリジナルをしのぐまでになっていたり、建物だけでも多様な変化を見せている。

これらのオリジナルの変化を把握するために、増築タイプを下記の5つに分類して、航空写真、アンケート、ヒアリング、から、1967、74、79、85、94、96、2004年、の時点でのオリジナルの状況を調べ、経年変化をさぐった。

  1. 増築をしないもの
  2. 平屋を増築するもの
  3. 2階建てを増築するもの
  4. 平屋の上に2階部分を増築するもの
  5. 1〜4を複合するもの

グラフを見ると、オリジナルのまま増築を行わずに現在まで残っているものは数棟と、増築を行うことで建物が住まわれ続けていることが分かる。

オリジナルへの増築は建設当初から始まっており、最初は空いている敷地内に1階屋を増築するものが多いが、これは工事的にも工期的にも簡便だったためと考えられる。その後、平屋の上に2階部分を増築するものの割合が増えるが、これは大きく分けると、工務店によるものとS社がオリジナルに用いた構造を発展させたシステムを使って増築したものの、2つがある。後者による増築は"純正"の増築だけあって、一見しただけではそれとは全く分からないように仕上がっており、地区によってはその増築タイプが固まって残っている場所もあり、現存するオリジナルの中で大きな割合を占めている。



家族の拡大と空間の拡大

このように形体を変えながら残ってきた住宅には、どのような世帯が住んできたのか、1996年時の世帯主の入居時の年齢を元に見ていく。

グラフを見ると、建設当初である1960年代から1980年代前半までは世帯主の年齢は30代まで半数以上を占めているが、1980年代後半以降は40代以上がほとんどとなり、G団地への入居者の高年齢化が見て取れる。その一方で1960年代に入居した世帯がそのまま高齢化し、現在までにG団地の多くの世帯において高齢化が進んできている。

これらの家族の変化に伴ってオリジナルへ増築が行われて、その結果、先に見たような建物の変化が起こっているが、増築を行った理由を見ると、その時々の要求によって増築が行われていることが分かる。建設当初から増築が盛んだった1970年代後半までは「子供の成長」が最も大きな理由であるが、これは当初入居世帯の世代と住宅面積からも裏付けられる結果である。その内に増築の主な理由は、「手狭になったから」や「生活空間向上のため」が多くを占めるようになり、面積的な問題の解決から行われていた増築は生活の質の改善方法として用いられていくようになる。また、1980年代後半に「同居」の占める割合が増加していることから、G団地に住む世帯の高齢化が窺える。



オリジナルを建替える理由

このように増築などの手を入れることで居住者がオリジナルに住み続ける一方、建替によって居住者が住要求を満たしていく、ということも当然起こってくる。建替件数のグラフを見ると、当初は件数が少ないのは当然として、1970年代後半から建替は一定の割合で発生し、現在までにはその割合は少なくなってきている。

また、建替についても増築と同様に、それぞれの年代での理由に傾向が見られる。建替が始まった当初の1970年代には建物が「手狭である」ことが主な理由となっているが、1980年代には「老朽化」を挙げる割合が多くなってくる。その一方で、1980年代後半からは「同居」が最大の理由となり、1990年代になると建替え理由の約半分を占めるようになる。このように、オリジナルを建替える理由が、「(家族拡大による)住宅の狭さの改善」→「住宅の質の改善」→「(家族同居による)住宅の根本的な改善」と移り変わっていく様子が読み取れる。



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