ライフスタイル考現行


「株式会社リビング・デザインセンター OZONE情報バンク」が提供する「OZONE家 づくりサポート」システムのスタッフとして「住まい手」と「つくり手」の間をとりもち、家づくりを支援する仕事に取り組んでいる菅野有香さんに、今、住まい手は住宅に何を求めていると感じているか、お話を伺いました。

菅野有香さん
住まい手に聞きました-今、あなたは住まいに何を求めていますか?

  「家づくりサポート」システムをつくったいきさつ  
今、住まい手は住宅に何を求めているのか
住まい手のライフスタイルに対する意識
住まい手は建築家に何を求めているのか




「家づくりサポート」システムをつくったいきさつ
木下 リビング・デザインセンターOZONE(以下OZONE)で「家づくりサポート」システムをつくられたいきさつについて教えてください。
菅野 もともとOZONEには、コンサルテーションのスタッフがおり、予約制で建主のご相談にのっていました。多くの方は、家づくりに関して一般的にはどうなのか、ということをお知りになりたいんですね。「工務店はこう言っているけれどそれは本当か」といったように。そうしたところ、家づくりをする中で、「知り合いの建築家に頼んでトラブルになった」とか、「建築家に頼みたいのだけれど、どのように声をかければよいか分からない」といったご質問が多かったため、それなら、OZONEに登録しているプロ・メンバーの建築家のなかからご紹介しましょうということから始まりました。

始めた当初は、建築家の事例集を見て本人と直接話をしてみる、いわゆる「お見合い」だけで建主が建築家を見つけなければならなかったため、どうしても成約率は低かった。なぜ成約率が低いのかということを考えると、まず建主が自分のことを知らなかったり、自分の要望をうまく伝えられなかったり、あるいは人柄は気に入ったのだけれど、いざプランを見ながら建築家と話し合いをすると何か違うというようなことがあったんですね。つまり、建主が何を求めているかということを整理すると同時に、建築家との出会い方をシステム化する必要があると考え、今のようなしくみをつくりました。

ただ、建築家をうまく見つけたとしても、実際のプランの作成には何ヶ月もかかります。その間に、「どうですか?」と建主に聞くと、「建築家の言っていることが分からない」とか、「ここが違う…と思っていても、それを建築家にどう伝えたらいいか分からない」といったことがありました。あるいは工事中の工務店に対する不安とか。ですから、建築家を紹介して終わりというものではなく、完成まで見届けようということで、今から2年前に現在のフルサポートを始めました。このシステムを使うか使わないかはお客様の自由ですが、こういう家づくりの選択肢もあるということを知ってもらいたいと考え、プレス発表をし、新聞や雑誌に広告を掲載するようになりました。このシステムを利用される方は、1年目はそれほど多くありませんでしたが、2年目はかなり増え、現時点では1ヶ月に10件以上のお申し込みがあります。


今、住まい手は住宅に何を求めているのか
木下 家づくりサポートの仕事にかかわるなかで、今、住まい手は住宅に何を求めていると感じますか?
菅野 建主に変化が見られるということが言われていますが、建築家の方が言う建主の変化というのは、お金にうるさくなったとか、理屈を説明しないと納得してくれないとか、そういったことのようです。情報が多い中で、今の住まい手は、理路整然と説明されないと納得しないということがあると思います。それはライフスタイルについてもいえることで、先にあるライフスタイルを示されても受け入れられないという傾向が、特にOZONEにいらっしゃるお客様には見受けられます。そういう意味で、住宅メーカーさんなどは、これからは今までのようなライフスタイル提案型の売り方が難しくなるだろうなと思います。

ちょっと前であれば住宅メーカーが提案するストーリーのあるライフスタイル提案型の住宅に憧れて買っていた人が多かったのではないかと思うのですが、今はそういう憧れに対する信仰がなくなっているのではないでしょうか。それよりも、自分たちにとって居心地のよい、自分たちらしい家がほしいという意識が強くなってきているようです。

「自分たちらしい家」といっても、個性追求といった大げさなことばかりではなくて、住むことへの意識が高まって、情報もたくさん手に入るようになった。そうしたら、どうも自分にとっての居心地の良さ、家にもとめる価値基準は、もっと自分の皮膚感覚に近いところにあるようだと感じ始めているといったことです。たとえばある建主は、清潔に保てるということにはとてもこだわるけれど、傷がつくことには無頓着、といったように。これは多くの人の生活の最大公約数でとらえていると見えにくい部分かもしれません。
木下 OZONEにいらっしゃるお客様は、住宅メーカーのどのような点に違和感を感じているのでしょうか?
菅野 話を聞いてくれないというか、もちろん聞いてくれるのだけれど、あくまでも間取りに反映するためだけでしかない。自分らしく…と考えている人にとっては、何が自分らしいのかということを整理する段階を無視して、いきなりどんな間取りにするとか、色はどっちにすると聞かれてもだめなんです。今聞いてほしいのはそれじゃないという感じで。先ほどお話ししたように、理屈がないとだめというか、最初から間取りの話をすることに違和感があるのではないでしょうか。


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