鬼怒川を渡ると、清原工業団地や芳賀町・高根沢町にまたがる地区に本田技研の工業団地が立地しており通勤需要がとても旺盛な地区となっています。この通勤需要が道路渋滞の一因でした。こうした需要に応えるため、平日の朝時間帯には宇都宮駅東口から工業団地方面に向け高密度運転や快速運転などの施策が取られています。
また、沿線にはゆいの杜などの住宅地も発達しており、駐輪場やパークアンドライドのための駐車場やLRTに合わせたフィーダーバスの運行などが行われています。駐車場については前年度と比較し利用者が増加していることが確認されているようです(13)。
写真12 清原地区市民センター前駅とフィーダーバス停留場、P&R駐車場
◆おわりに
本稿では、宇都宮市中心部のまちなみとLRT開業後の沿線のまちなみを紹介しました。栃木県では、通勤・通学における公共交通の交通手段分担率が低く、自動車に依存している傾向にあることが示されており、2020年国勢調査結果による人口100人あたりの自家用車保有台数は全国第2位であり、特に県北地域の自動車依存度が他地域よりやや高い傾向にあることも指摘されています(14)。
そんな中で、昨年11月時点においてLRTは当初予測を上回る利用が確認されており、今年度においても利用は増加しています。また、開業後の効果として開業前と比較して住民の外出頻度が増加していることや1日あたりの平均歩数が増加し健康促進が期待されることが指摘されており、また沿線地域の来訪頻度と消費額の増加や地価上昇、人口における転入超過などが確認されています。また、鬼怒川を渡る道路や市街地部での道路における交通量が減少している箇所も複数確認されており、理由の一つとしてLRTへの転換が推測されています。2024年12月時点ではLRTが開業して1年弱となりますが、自動車依存社会脱却という観点において一定の効果が得られていることが確認できました(13)。
一方で、道路との境界があいまいであるというLRT特有の特徴上自動車などとの事故はどうしても起こりやすく、数件の事故がすでに起こっています。また、踏切が原則新規設置できないということもこうした背景の一つです。このような特徴を社会全体が認識し、個々人が慣れていくことにより、LRTと車、自転車、歩行者が共存できる社会になると考えられます。
図1にも示されている通り、LRTは東武宇都宮駅方面への延伸が計画されています。また、東武宇都宮線とLRTの直通も視野に入れた接続も検討されています(15)。LRTの開業効果が高かったことは示されており、延伸によってオリオン通りや東武百貨店などへの来客数の増加が期待できます。また、東部と同様に自家用車利用からのシフトが起こり、都心部における自動車交通量の減少も同様に期待されます。将来、宇都宮駅西部と東部がLRTという公共交通機関によって結ばれることで、宇都宮はさらに魅力的なまちになるのかもしれません。