ダウンタウンの西の地区、ウェストエンド周辺は様々な国のレストランがあり、しかも安価だ。
安い食事と言えば、ギャスタウンのさらに東にある、北米最大規模のチャイナタウンを忘れることができない。
これらダウンタウンの中心を歩いていると、あまりに美しく幸福なバンクーバーに潜む、というより公然と横たわる、闇を見ることができる。
それは非常に多くのホームレスだ。バンクーバーの夏は暑苦しくなく、冬も緯度の割にそれほど寒くならないため戸外での生活が比較的行い易く、
カナダ中からホームレスが移り住んで来ているという。ホームレス増加の原因には政府による、過剰ともいえる福祉政策もあげられる。
無償の食事配布はもちろん、ドラッグ用の新品の注射器の無料配布(!)も行っているという。
これは注射器の再利用などで感染症などが発生することを防ぐためらしいが、ドラッグの蔓延事態は野放しのままになっている。
ガスタウンを東に抜けた、チャイナタウンの北の地域はそのようなホームレスやジャンキーが屯する危険な地域である。
ロブソン通りを歩いた後、このような場所を通るとダウンタウンの大きな格差を実感できる。
実際この危険な場所はカナダ全土で最も家賃が安い場所であり、カナダで一番の地価の高いロブソン通りがそれほど離れていないところにあるのが少し不思議である。
しかし一部の危険な地区に近寄らなければバンクーバーはいたって安全で楽しい町だ。町の人々は本当に親切な人が多い。
仕事帰りの人に道を聞いても、とても丁寧に答えてくれる。つたない英語を笑顔で聞いてくれる女性の顔に、「ストレス」の文字は無かった。
もちろんまったく無くはないだろうが、東京の地下鉄で満員電車の中に押し込まれ、隣の人の体臭に顔をゆがめている人の顔を思うと、
どちらが豊かな生活を送っているかは明白ではないだろうか。
自然と都市が幸せな結婚生活を送っているバンクーバー。果たして日本の都市はどうだろうか。日本の自然と都市は、今や離婚の危機にあるのだろうか。それとももはや、離れ離れになってしまっているのだろうか。
(文責:川中彰平)