写真5. 小樽運河の裏通り。倉庫を駐車場に活用することで運河側の景観の連続性を保つ
小樽は観光都市として、国内・海外から観光客を惹きつけていますが、一方で課題も存在します。第二次小樽市観光基本計画では、宿泊観光客の少なさが課題として挙げられています。札幌から40分というアクセスの良さや小樽市の観光コンテンツの性質上、通過型の観光が主流となっているため、域内消費が少なくなっています。インバウンド観光の発展で海外観光客の宿泊は伸びているものの、全体の観光入込客数に対する宿泊率は依然低い水準のままとなっています(第二次小樽市観光基本計画を参照)。
そこで市としては観光の高付加価値化を掲げ、宿泊観光を盛んにすることを目指しています。2022年には星野リゾートが手掛ける「OMO5小樽 by 星野リゾート」というホテルがオープンしました。このホテルは歴史的建築物が並ぶウォール街のエリアに位置しており、ホテルの北館は旧商工会議所(写真6)の外観を残しリノベーションした建物です。この建物と取り組みは先述の小樽市都市景観賞として表彰もされました。今後も街並みと調和した、小樽独自の宿泊体験ができるホテルが増えていくかもしれません。
写真6. 旧小樽商工会議所の外観。リノベーションを経てOMO5小樽の南館となっている(写真は小樽市[7]を参照)
◆おわりに
歴史と文化を反映したノスタルジックな景観から観光都市として人気を集める小樽ですが、実際に街を歩くと、景観賞や景観区域の看板など、街並みを維持するための取り組みがアピールされており、景観の美しさだけでなく、景観を作るための努力を知ることができました。
魅力的な観光都市である小樽市も、他の地方都市と同様に人口減少や建物の老朽化といった課題を抱えています。観光地としての発展と歴史的な建造物の保存を両立させるためには、市民と観光客を含めた社会全体の取り組みが必要です。今後も小樽の魅力的な街並みを支えていく取り組みに注目していきたいです。
(文責・写真:宮岸凌也)
◆参考文献
[1]小樽市: 小樽市指定歴史的建造物, https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020101500269/
[2]小樽市: 小樽市都市景観賞, https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020112000239/
[3]小樽市: 小樽市歴史景観区域, https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020111600836/
[4]小樽市: 景観計画区域の行為の制限, https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020111600843/
[5]小樽市: 小樽市観光基本計画, https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020101000233/
[6]星野リゾート: OMO5小樽 by 星野リゾート, https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5otaru/
[7]小樽市: 小樽市指定歴史的建造物 第10号 旧小樽商工会議所, https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020101500399/