宮崎県都城市~中心市街地における新旧の憩いの場~

◆はじめに

 宮崎県都城市は約16万人(令和5年6月1日現在の住基人口)の都市である。都城市はふるさと納税による財源を活用した移住支援策を展開し、県外からの移住者が増加していることでも有名な自治体である。
 都城市が2022年に策定した「第2次都城市総合計画 第2期総合戦略」では、まちづくりの基本方針の1つに「圏域の中心としての魅力を築く」と定められ、重点プロジェクト13で「中心市街地の活性化とまちなか居住の推進」が挙げられている。このプロジェクトにおける具体的な方針には、市民の来街動機を刺激する様々な取組を展開し、来街者の増加を図ること、魅力的な店舗等の誘導による商業機能の再生、リノベーションまちづくりによる遊休不動産等の有効活用を促進し、来街者が回遊したくなる中心市街地へと再生を進めることの2つが挙げられている。
 そのため、今回は都城市における中心市街地の活性化策に着目し、神柱公園、都城島津邸、Mallmall(まるまる)を訪問した。神柱公園と都城島津邸は居住誘導区域内、Mallmallは都市機能誘導区域内に位置しており(図1)、将来にわたって人々の生活の中心になる地域と考えた。


都城市における訪問地の位置(図1)
出所)国土数値情報「行政区域データ」(令和5年度)、国土数値情報「立地適正化計画区域データ」(令和2年度)、国土数値情報「鉄道データ」(令和4年度)、総務省統計局「国勢調査(2020年)小地域(町丁・字等)」から作成

◆中心市街地の状況

 訪問地の周辺は都城駅、西都城駅があり、市内で人口密度が高い地域である(図2)。
 住民が日々の買い物や散歩等の生活する場所あるいは市外からの観光客を受け入れる場所として中心市街地が機能している。Mallmallと都城島津邸が立地する小地域では人口が少ないが、商業地域や歴史的施設のためであるからだと考えられる。


訪問地周辺の人口密度(図2)
出所)国土数値情報「行政区域データ」(令和5年度)、国土数値情報「鉄道データ」(令和4年度)、総務省統計局「国勢調査(2020年)小地域(町丁・字等)」から作成

◆まちなかのオープンスペース(神柱公園)

 神柱公園は神柱宮(神社)を中心に整備されている公園である。オープンスペースとして、芝生や遊具、川沿いには東屋やベンチが整備されていた。散歩中の住民や、家族連れの姿が多く見られた。


神柱公園(写真1、筆者撮影)

◆歴史的施設の活用(都城島津邸)

 都城島津邸は都城市内の観光スポットの1つである。建物は、都城島津家26代当主の島津久寛のときに建設され、昭和10年の陸軍大演習が都城で行われた際に、閑院宮の宿泊に備えて改築、昭和48年に昭和天皇皇后両陛下の宿泊に備えて改築されたものである。


都城島津邸(写真2、筆者撮影)

 敷地内にあった石蔵は、外観が当時のまま残されている一方で、内部が改装されてカフェとして活用されている。石倉のため、内部はやや薄暗かったが、ランチや喫茶が提供されており、利用客でにぎわっていた。


石倉を改造したカフェ(写真3、筆者撮影)

◆中心市街地中核施設(Mallmall)

 Mallmallは平成30年度にオープンした施設である。図書館や子育て世代活動支援センター、駐車場といった8施設が一体的に整備されている。図書館の一階にはカフェも設置されており、市外からの訪問者でも利用しやすい空間が整備されていた。
 神柱公園・都城島津邸の周辺と比較すると、Mallmallの周辺には店舗や飲食店が多く立地しており、にぎわいが感じられた。


図書館(写真4、筆者撮影)

 特にまちなか広場は白い大きな屋根が特徴的であり、複数の施設を屋根がつなげることで一体的な空間に変えていた。雨天であってもこの屋根の下を通行することで、雨に濡れずに各施設間を移動できた。
 Mallmall周辺は都城市が実施する「都城市まちなか活性化プラン事業」において3カ年計画(令和5~7年度)で中心市街地全体の活性化を図っている地域であり、イルミネーションやイベント開催を補助金で支援している。 週末にはこの屋根の下でマルシェなどのイベントが開催されており、にぎわいが創出されていた。


まちなか広場を見下ろす(写真5、筆者撮影)

◆おわりに

 神柱公園といったオープンスペース、都城島津邸のような歴史のある建物の活用、近代的な建物群から構成されるMallmallと、異なる性質をもった中心市街地での憩いの場を訪問した。この3施設を徒歩で移動して訪問するには、やや距離があったが、車で移動することで一体的にまちづくりを行っているともいえる(訪問地は全て広い駐車場を備えていた)。
 一般社団法人都城観光協会は「まちなかレンタサイクル」として、普通自転車を無料(電動自転車は有料)で貸し出しており、2023年8月からMallmallまちなか交流センターも貸出場所に追加されている。今後はパーソナルモビリティの普及により、今回の訪問地だけでなく中心市街地を周遊可能になることが期待される。
 このような中心市街地活性化の取り組みにより、移住者を含む市民も、暮らしやすいまちになっていると考えた。

◆参考文献

1.都城市「都城市の住基人口を公表します」
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/12/3849.html
2.NHK「都城に移住 昨年度は最多435人 ふるさと納税財源に支援」(2023年5月22日)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/miyazaki/20230522/5060015435.html
3.都城市「第2次都城市総合計画 第2期総合戦略」p.19
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/uploaded/attachment/21817.pdf
4.都城市「都城市都市計画マスタープラン 居心地いいまち都城」第2章 本市の特性とまちづくりの課題
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/uploaded/attachment/16109.pdf
5.都城市「島津発祥の地・都城の歴史と昭和天皇の足跡を知る 都城島津邸」
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/site/kanko/10419.html
6.都城まちづくり会社「Mallmallとは」
https://www.machidukuri-miyakonojo-city.jp/mallmall%E3%81%A8%E3%81%AF/
7.都城市「都城市まちなか活性化プラン事業を紹介します」
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/77/44597.html
8.一般社団法人都城観光協会「まちなかレンタサイクルについて ※7/31情報更新あり」
https://miyakonojo.tv/archives/17654

(文責:岡澤 由季)