トレドの郊外から旧市街に向かって歩いていくと、街を囲い込むようにそびえ立つ城壁が目に入ってきます(写真1
)。この城壁は、当時敵の侵略を防ぐために設けられたもので、旧市街中心部へはビサグラの新門などの城門を通過
しなければなりません。これら旧市街は小高い丘の上に立地しており、中心部ほど高い場所にあるという層状の構造
をしています。そのため、街の外側から中心部を伺い知ることはできず、街を防御するのに適した要塞のような作り
になっています。そして、一歩城壁の中へ足を踏み入れると、石畳と石造りの建物が建ち並ぶ茶色の街が広がります
(写真2)。このように住宅や公共施設などの建物はレンガの茶色で統一されていますが、それでいて各建物はいろい
ろなレンガの積み方やテクスチャーによって装飾され、それぞれに個性があります。

(写真2)
市街地の大きさはそれほど大きくなく、約1kmほどで街の反対側まで辿り着きます。はタホ川が流れています。ここに
はポルトガルまで続くタホ川が流れており、13世紀の初めに建築されたゴシック様式のサン・マルティン橋が架かって
います(写真3)。ここから眺める景色は、のどかでとても美しいです(写真4)。

(写真3)

(写真4)
また、街の中心部にはカテドラルの荘厳な建物を見ることができます(写真5)。近くの広場には多くの飲食店が軒を連
ね、パフォーマンスをする人とその観客で常に活気があふれています(写真6)。この賑やかを見ていると、一体どこか
ら人が集まってくるのかと考えてしまいます。というのは、街中を歩いていて、洗濯物を干しているとか、家の中から声
が聞こえてくるなどという生活感が感じられなかったためです。この旧市街には約1万5千人の人々が暮らしていることを
考えると、トレドという街はとても不思議な街だという印象を持ちました。

(写真5)

(写真6)
また、トレドの街並みで最も特徴的なのは、その迷路のような街の構造です。城壁と同じく都市防御の目的で、市内の道
は細く曲がりくねり、建物は壁のように建ち並んでいるため、視界が非常に限られています(写真7)。街の中心部にある
カテドラルやサントトメ教会に辿り着くには、時折顔を覗かせる遠景を頼りにするしかありません(写真8)。しかし、こ
の迷路構造のおかげで、ただの町歩きが探検のようにわくわくするものへと変わります。このような雰囲気は他の都市には
見られないトレド独特の魅力であると言えるでしょう。

(写真7)

(写真8)
しかし、街を歩いていて気になったことがありました。それは交通量の多さです。先ほど述べたように、トレドの道はとて
も細く車がやっと一台通過できるほどです。にも関わらず、車は歩行者の脇を次々と通過していきます(写真9)。市街地の
中には駐車場や車を停めるスペースは見あたらなかったため、前述したサン・マルティン橋からの通過交通が発生していると
考えられます。魅力ある街並みとは、建物や道が優れているのみではなく、人々が安心して歩けることなどの街並みを楽しむ
ための環境作りが必要であると感じました。(文責:三浦佑介)

(写真9)