風の散歩道。左側に玉川上水が流れ、右の沿道には小規模なマンション等が建ち並ぶ。人通りも少なくない。沿道には山本有三記念館もある。
そもそも、自宅近隣でもない住宅街を歩くという機会は通常ほとんどありません。しかし、見知らぬ住宅街を歩き、そのまちなみの雰囲気や表情を感じ取ることで時に新鮮な気分になれるものです。三鷹市下連雀の住宅街は緑が多く、落ち着いた雰囲気を味わうことができます。そんなまちなみの中で見つけた、住民の方々の「魅せる」心意気をご紹介していきたいと思います。
「魅せる」工夫は、ほんの少し配慮するだけでも可能です。写真2(左)のように、外壁にきれいな草花を添えるだけでも雰囲気は随分変わりますし、写真2(右)のように、コンクリート壁に緑を這わせるだけで印象も異なってきます。これらの工夫は、住宅自体の設計段階から考慮せずとも可能なものと言えるでしょう。

(写真2)外壁における小さな工夫
また、色という観点で緑と住宅の調和を図っているような工夫も見受けられました。写真3(左)の家では、住宅二階部にベージュ、一階部にレンガ色、前庭に青色構造物、そして緑、という具合に色のバリエーションを創出しています。また写真3(右)の家はレンガ色の屋根に加え、鮮やかな赤色のひさしが豊富な緑の中で効果的なアクセントにもなっています。この住宅敷地には他にも陶器の人形や小物等が多数置いてあったり、クリスマス時期にはかわいらしい電飾が施されたりと、周辺住民の目を楽しませてくれているそうです。

(写真3)家と緑が織り成す色
さらに、より大胆に植物を配置している住宅もありました。写真4(左)の住宅敷地内には高い松の木が聳え立っており、住宅もこの木を囲むよう設計されていました。また写真4(右)の庭には大きな桜の木があり、春に訪れると大変美しい光景を眺めることができるそうです。これらの例は設計段階から考慮せずには実現できないかもしれませんが、それだけ「魅せる」工夫も周囲に感じさせることができます。

(写真4)大木のある家
以上のような素晴らしい例がある一方で、改善すればもっと良くなると感じる点もあります。まず、緑には維持管理が必要で、コストもそれなりにかかるものです。特に夏場は雑草の成長も早く、写真5(左右)のように、植物がやや雑多に見えてしまうこともあります。また、写真6(左)のように、敷地前面に高いコンクリート壁を隙間なく配置するような例もあります。住宅地として、やはり防犯の観点でこのような壁を配置せざるを得ない場合もあるかと思われますが、例えば写真6(右)のような、防護的かつ緑も豊富な印象を与えうる外壁の例もあります。

(写真5)手間のかかる緑

(写真6)防犯か、緑か
今回は三鷹市下連雀地域を中心に、住宅地における「魅せる工夫」等をご紹介してきました。自分の敷地及びその上に建つ住宅は「私財」であり、法律や条例その他の規制さえ守れば、何をしようが基本的には自由です。予算次第では、最低限の居住水準を満たすべく、まちなみなど意識する余裕がない場合もあるでしょう。今回の住宅地には、おそらく所得水準のある程度高い方々が住んでいると推測されます。きらびやかな大邸宅を建てて自己の財力を誇示しようとする方もいらっしゃるかもしれませんが、周囲のまちなみの雰囲気を感じ取り、調和的な工夫を施そうとしている雰囲気の方が圧倒的に強く感じられたように思います。思わぬ発見を期待しつつ、見知らぬ住宅地をぶらぶらしてみるのもまた楽しいかもしれません。(文責:金井隆幸)