山居倉庫 〜山形県酒田市

酒田市は山形県の北西にある県下第3位の市です。隣接する鶴岡市は城下町である傍ら、酒田市は商業の街、港町という雰囲気を持っています。その商業、港町と言うべき象徴的な建物として山居倉庫があります。

明治26年に酒田米穀取引所の付属倉庫として建築された土蔵造りの倉庫です。現在もなお農業倉庫として利用されています。ウェブで「山居倉庫」と調べるとよく出てくる倉庫と平行して植えられているケヤキ並木は、通りの街路樹としてではなく日よけや冬の強い季節風から建物を守るために植えられたものである。秋に収穫されたお米を適切に保存するために行われたこの建物ならではの工夫です。

倉庫が建ち並びその脇にケヤキ並木のある風景は有名で、「おしん」というドラマのロケ地としても使われています。ただ実際、ここは倉庫の裏側なのです。表側は下記の写真のようになっています。

(写真1)


表側は最上川に面しており、江戸時代から最上川舟運の拠点の一つでした。現在でも川に面して船着き場が残っています。

(写真2)


ケヤキ並木のみならず、建物そのものにも様々な工夫がなされています。屋根は二重構造で内部の土間には特別ににがりを混ぜた土が使用され、倉庫内の温度や湿度を一定に保つ工夫がなされています。酒田の冬は雪も多く降りますし、季節の差が非常に大きな場所であるためこのような工夫は欠かせませんでした。また、倉庫入り口前に大きく張り出した軒も荷物の出し入れを積雪に妨げられず容易に行うためのものでしょう。

(写真3)


山居倉庫のような、直接人の生活の器としての建物ではないものによるまちなみからも様々な工夫が読み取ることができます。例えば並木道を作るときも、単なる木の植えるのではなく、そのまちなみの太陽の軌道であったり、風の向きなどを考慮して、木の種類や植える間隔を決めてみても良いのではないでしょうか。実際は「倉庫」という機能を満たすための工夫であるかもしれませんが、そういう所からも、馴染みのまちなみからは得られないような方法をここから得ることもできるのではないでしょうか。(文責:稲坂晃義)