観光地化として成功した知覧ですが2002年をピークに観光客は減少しており、現在ではピークの半分ほどの数字となっています[6]。観光客の減少の理由としては2つあると考えています。1つ目は競合の出現です。伝統的建造物群保存地区に関しては知覧が選定された当初は九州では2件目、全国では17件目でしたが、本稿執筆時点の2024年2月では九州で24件、全国で127件と増えていることがわかります[7]。また、知覧特攻平和会館に関しても埼玉ピースミュージアムや沖縄県平和祈念資料館など平和学習を行える施設が続々と開業しています。2つ目はアクセスに関する問題点です。筆者は鹿児島中央駅から路線バスで49駅経て1時間20分ほどかけて知覧に行きました。また、知覧に着いてからも知覧特攻平和会館と知覧武家屋敷庭園は徒歩で30分ほど離れていました。1つ目の課題である競合との差別化は困難ですが、武家屋敷に関しては石垣と生垣が形成するまちなみや知覧大工の創意工夫による知覧型二ツ家、知覧特攻平和会館に関しては特攻隊という二度と繰り返してはいけない悲劇を最も伝えられる場所としてのそれぞれの独自性をPRすることが重要であると考えます。
写真8
2つ目の課題に関しても鹿児島交通知覧線が1965年には廃線になっていることから鹿児島中央からのアクセス向上は困難であると考えられますが、知覧内のアクセスに関してはシェアサイクル茶巡が2022年より開始されシェアサイクルと知覧茶巡りを掛け合わせた新しい観光の提供を始めています[8](写真8)。このように永久に歴史や平和の尊さを語り継ぐには様々な課題がありますが、それらを乗り越えるための対策にこれからの期待がかかります。
(文責・写真:江端吾朗)
◆参考文献
[1] 鹿児島県:茶業振興対策資料
https://www.pref.kagoshima.jp/ag06/chagyoshinkou/documents/87621_20230524201344-1.pdf
[2] 日本交通公社:知覧の茶畑
https://tabi.jtb.or.jp/res/460047-
[3] 知覧武家屋敷庭園:知覧武家屋敷
https://chiran-bukeyashiki.com/pages/14/
[4] 文化庁:日本遺産ポータルサイト
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4697/
[5] 知覧特攻平和会館:これまでの歩み
https://chiran-tokkou.jp/steps.html
[6] 南九州市:地域再生計画
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/dai47nintei_furusato/plan/a085.pdf
[7] 文化庁:「重要伝統的建造物群保存地区一覧」と「各地区の保存・活用の取組み」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/judenken_ichiran.html
[8] 南九州市観光協会:シェアサイクル茶巡(チャーリー)について
https://minamikyushu-kankounavi.com/postSingle.php?mCd=62972c304111b&cd=MKKK0673&lang=ja