尖塔の魅力

イスタンブール
トルコのイスタンブールは、有数の観光都市である。東西文化が融合し、町の要所要所のランドマークとして、大きなモスクが築かれている(写真1)。

写真1 イスタンブールのまちなみ


しかし、イスタンブールの魅力をより高めているのは、ガラタ地区にあるガラタ塔だろう(写真2)。ガラタ塔は、イスタンブールの旧市街から良く見え、その尖塔がまちなみに明確なアクセントを与えている。イスタンブールのヨーロッパ側には、トプカプ宮殿やアヤソフィアなどのある旧市街とガラタ塔のある新市街に分けられ、その間に橋が渡されている。この2つを相対峙してお互いの風景を愛でることができる地形と都市構造が、イスタンブールの観光都市の重要な資源となっているのである。

写真2 ガラタ地区


ガラタ地区を歩いていても、ガラタ塔はそれほど見えるわけではない。近くの道に入ると突如として姿を現す(写真3)。

写真3 ガラタ塔の見え方


ガラタ塔の優美さもさることながら、ぬきんでて大きな塔の存在は、対岸からの風景を形作り、また、ガラタ塔の上からの360度の眺望を楽しむのに絶好の機会を与えてくれる。

写真4 ガラタ塔


ランドマークとしての尖塔とそれを意識した市街地構成は、世界の各所に見られる。例えば、ロンドンで新設された歩行者橋は、明らかにその先のセントポール寺院を意識して作られている(写真5)。

写真5 セントポール寺院を意識した歩行者橋


町のランドマークとしての尖塔の存在とそれに当てた街路の工夫、そして、遠くから愛でることのできる尖塔付近の高さの配慮は、都市としての品格を高める装置となっている。日本でも、周辺市街地も含めた強調による日本的な尖塔や屋根の強調により、都市の品格を高めたい。(文責:浅見泰司)