受賞者名 (株) 石川淳朗建築設計事務所 石川淳朗
作品名 古い街並みに潤いと息吹を放つ住宅
街道側から。長屋はそのままに残している。中央が入り口。(写真は新築前)


●まちなみ配慮のポイント
 古い長屋そのままの一部を入口としているため、アプローチがその住宅の顔のひとつになった。まちゆく人が、奥まった光の中に緑の木々や石畳、木の格子戸を目にしたとき、ふと潤いや生命の息吹といったものを感じてもらえているのではと思う。また、この住宅に近接する二王座地区からの外観も、この古い城下町にふさわしい材質、色使いに配慮している。そしてこの住宅は近隣の方々にも親しまれており、特にテラスは人々の憩いの場となっている。

講評
 大分の臼杵の町は、往時を偲ぶことの出来る数少ない町である。野上弥生子の家を訪ね、寺町を歩く時いかに多くを、日本の町は失ったかを知ることになる。
 この建物は表通りを長屋のまま残し、内なる新たな建物を創り出している。そのために町の人の記憶は甦ることが出来る素敵な成功例である。
 長屋の中門越しに見える石畳、緑、格子戸が街並みの情景とマッチして清涼感を漂わせている。街道から10m余り奥まった奥行き感も心地よい。瓦屋根を冠した木造平屋の専用住宅には、小屋組みを照らすトップライト、母屋と一体化したテラスの屋根など、シンプルな中に巧みな配慮が行き届いていている。古井戸と柿木を残した庭は、ひとびとを迎い入れて近隣の憩いの場としても活用され、内なる建物も町に生き続いている。

「まちなみ住宅」100選 審査委員会
受賞者一覧表へ戻る