講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


濱惠介さんの話を伺って



自ら九州、関西、首都圏、オーストラリア、フランス、インドネシアでの居住経験を持ち、また設計者として多くの住宅・住宅地開発に携わってきた濱さんが、どのような気持ちでついの棲家を決めたのかには大いに関心があった。 今まで住んだことのない奈良に場所を決めた経緯、放っておいたら壊されるかもしれない中古住宅を再生して住もうと思ったこと、できる限り環境に優しい生活がおくれるように改造・改装を続けてきた経験、そしてその一部始終を1冊の本にまとめたこと、それのすべてに生活者としての濱さんの一貫した思想があることを、改めて強く感じた。 その思想は何も対象を住宅に限ったものではなく、現代社会のあり方、今日的な人間の生き方全般に関するものだが、そうした思想を実践し、更に発展させる上で、住宅づくりという機会は最大・最良の機会であるという濱さんの考え方は、「住宅とライフスタイルは一体どのように関連付けられるのか?」と頭をひねり続けてきた私にとって、ある種の確信を持たせてくれるものだった。 それは「ライフスタイルと住宅は、住まいづくりの実践という機会を通して豊かな関係を持ち得るのだ」という確信である。 エコロジーという話は,生活のあらゆる場面で意識するようになって久しいが,残念ながら現在のところエコ住宅はハイブリッドカーほど身近な存在ではないだろう。 21世紀の地球環境をまじめに考えると,今後の住宅はエコ住宅以外考えられない様に思う。 そんな中で早くも一つの可能性を示されたのが,今回お話を伺った濱さんのエコ住宅である。(松村



農家や町家など木造民家を再生して居住する事例は次第に増えて来ているが、RC造を環境に配慮して再生する事例に関して濱さんはまちがいなくパイオニアである。人生の実りの時を迎えるための土地探しからはじまる再生エコハウスの実践のお話は、戸建てを新築して(あるいは最近なら都心にマンションを購入して)あがりという従来の住宅双六にかわるあり方を示唆してくれるものであった。
もう一つ興味深かったのは、太陽エネルギーで生まれた電気やお湯によって意識や暮らし方が変わっていったお話である。もちろん濱さんの場合、海外での居住体験などを通しての「足るを知る」という確固たる理念があってのことであるが、ライフスタイルというのは、あらかじめ個人の中にあって意識・行動の詳細まで決まっているものというより、具体的な居住の実践の中で、環境との応答によって発現・発展していく性格のものではないかという感想をもった。(鈴木



エコ住宅と聞くと,住宅のハードがどの様にエコ化しているかに注目してしまうが,本当は住まい手のエコ意識の高さこそが重要であることが分かった。 つまり,住宅がエコ化しても住まい手の意識がエコ化していなければ結局意味がない様に思える。 さらに言えば,住まい手がちゃんとしたエコ思想を持っていれば,自然と住宅はエコ化していくように思う。 濱さんの場合は,まさしくこのケースで,環境共生に対する独自の思想がまずあって,そこからエコ住宅の考えがスタートしている。 だから濱さんのエコ住宅は新築ではなかったのだ。環境共生という視点から見れば,まだ使える古い建物を壊すことこそが大きな環境破壊という訳である。 また,濱さんのエコ住宅への挑戦に終わりはない。環境と人間との最適な関係を模索して実験を繰り返し,構築を続けられている。
さて,我々は濱さんから何を学べばよいのだろうか?言うまでもなく,濱さん自身の生き方であろう。技術は常に進歩するし,エコ住宅の考え方も人により様々である。 その様に移り変わるものに振り回される必要はない。自分の身の丈を知り,自分を信じ,自分に出来る小さなことから始める。 日常の中のちょっとした意識改革が環境共生という大きな問題を動かしていくと確信した。(西田


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