講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』



木下 コレクティブハウスというと、食事をいっしょにするなど、生活の一部を居住者が共有するようなイメージがあるのですが、実際はどのような生活を送っているのですか。

篠原 6人という限られた人数の中では、職業や帰宅時間がそれぞれ違うので、食事を一緒にとるのは無理ですね。ただ、集まって住むことのメリットを活かすために、合理的に暮らそうということでいくつか分担を決めています。まずゴミ出し当番があります。1人が1週間担当すれば、6週間に1回ゴミ出しをすればよいことになります。また、買出し当番というのもあります。全員分の買い物を担当するというわけではありません。調味料やトイレットペーパーなどはみんなで共有するものと割り切っていて、月に1回のペースでなくなっているものをチェックして買出しにいけば、買い物は6ヶ月に1回ですみます。また、掃除については、家全体をブロック分けして、1週間1番のブロックを担当したら、次の週は2番のブロックをやり一週間休むという風に、小学校の掃除当番のようなやり方をしています。

梅津 そうした役割分担を決める話し合いなどは、どのくらいのペースでおこなわれるのですか。

篠原 コモンリビングでのミーティングは月に1、2回程度です。また、各自気づいたことがあれば、メールでスケジュールを調整しながら、話し合いの機会を設けています。それに加えて、書き込み帳をコモンリビングに置いておき、気づいたことを 各自書き込むようにしています。
このようにまめに連絡を取り合って、最低限暮らしていく中で協力し合ったほうが合理的な部分を決めており、そうしたことができるのが今までにないここでの生活のメリットだと思います。ここでの生活は今年の3月に始まったばかりですが、話のテンポが速くて、既にゴミだし、掃除、買出しのルールが決まっています。

木下 篠原さんはここで暮らす前はどのようなところに住んでいたのですか。

篠原 以前は下高井戸で、ある地主さんの家の離れを借りて住んでいました。そこでも、大家さんとひとつの庭を共有しながら、時々話をしたりして暮らしていました。そこでの生活が面白かったこともあり、今回もコレクティブで暮らしたいと思うようになりました。学生時代は一人暮らしです。そういう意味では、ひとつの家をシェアするのはこれが初めての経験ですが、特に違和感はありませんでした。

木下 住んでみて分かったことは何ですか。

篠原 ひとことで言えば、「意外に気にならないものだ」ということです。お互いに最低限ことを気にかけながら生活しているけれども、例えば同じお風呂のお湯を6人の他人で使うことを気にする人は誰もいないようです。

一人暮らしをしていて、ここに来ることが決まった時に、何ができて何ができなくなるかを考えたことがあります。朝裸で部屋をぶらぶらできなくなるといった事も考えましたが、それが本当に必要なことかどうか考えると、そんなに必要でもなかったので、だったらここで暮らしても大丈夫だろうと思っていました。

木下 ここでの生活のメリットは他に何かありますか。

篠原 最初に感じたのは、自宅でもないのに、帰ったらお風呂が沸いているということですかね(笑)。夜遅かったのですごく便利だなと思いました。それから、一人で暮らしていた時は、自分だけしかいないわけですから、ぼーっとしていると時間が勝手に流れて一日が終わってしまうようなことも多かったですが、ここではそれぞれがそれぞれの時間を過ごしている中で、今ここにある自分の時間を実感することが出来ます。今の自分の時間をすごく豊かなものに感じることができるようになりました。

となりの部屋でイラストを描いている人、キッチンで料理している人を見ながら何でここにはこんなに色々な人がいて、こんなに色々なことをしているんだろうと思いながらも、不思議とリラックスできるんですよ。現在は20畳の部屋を9団体に貸し出していて、さらにいろいろな人が訪れています。これからは、もっと地域にも開いた場所にしていこうと考えています。


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