講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
廃屋に何が可能か―西村組&合同会社廃屋
西村周治さん
神戸芸術工科大学出身。複数の設計事務所に勤務したのち神戸R不動産の立上げに携わる。2012年に西村組一級建築士事務所、2018年に合同会社廃屋を設立。2020年に梅村(バイソン)づくりに着手。



1. 梅村(バイソン)を拠点にするまで
2. バイソンとは?
3. バイソンツアー1:アジト、アーティスト・イン・レジデンス
4. バイソンツアー2:Gotei、共同茶室
5. 半人前大工を育てる
6. 実現するか!廃屋を使った建築づくり演習
7. まとめ



1. 梅村(バイソン)を拠点にするまで
松村:  西村さんは、西村組という建築士事務所と合同会社廃屋という宅建会社を営みながら、朽ち果てたような建物の利用に取り組んでいます。現在は神戸の山側の廃屋群を活動拠点にしていますが、廃屋への関心はいつ頃生まれたのでしょうか?
西村:  中学生の時のことですが、父親が滋賀県で廃屋を買ってきたんです。今思うと、その改修経験が始まりかもしれません。高校生の時には、世の中おかしいと思う出来事があって、夜中にバイクを乗り回すようになりました。事故で下半身麻痺になりかけてとても受験勉強できる状態じゃなかったんですが、絵画を審査してもらえる大学を見つけて進学した感じです。ですから、神戸芸術工科大学に進学したのは成り行きみたいなところがあります。もっとも授業はあまり馴染めませんでしたが、ほどなく大学の先輩の三宗匠さんたちと知り合いました。彼らは兵庫区で長屋の改修に取り組んでいて、僕も一緒に作業を行うようになりました。
松村:  大学卒業後は何をされていましたか?
西村:  設計事務所とラーメン屋のアルバイトを掛け持ちしていました。そのうち家賃を払えなくなって、三宗さんに紹介してもらった倉庫を3人で直してシェアしました。そうした暮らしが7年間ほど続きましたが、マンション再開発が持ち上がって立ち退くことになったんです。小泉寛明さんから声を掛けてもらったのがその頃です。2012年から神戸R不動産の立上げを手伝うことになり、王子公園から春日野道にかけての高架下でクラフト街づくりをしました。ここで不動産の運用方法や資金調達を学べたことは大きな経験になっています。
松村:  ご自身の住まいはどうなりましたか?
西村:  2014年に空き家を買いました。直して住み始めたら、貸して欲しいという方が現れてすぐ別の空き家を買うことになりました。こうしたことを5、6件繰り返しているうちに神戸市梅元町の廃屋を見つけました。




1  2  3  4  5  6  7  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP