講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.尾道空き家再生プロジェクトの役割
松村:  尾道は新旧が混じり合った生活感がある街ですね。古い街なみを残していくのは、尾道市全体の意見なのでしょうか?
豊田:  少し前までは、ライフラインなどを整備しづらい厄介なエリアという認識だったと思います。しかし、空き家バンクを通じて移住者が増え、いいお店も現れたりしたため、古い家が資源であると行政側も気づいてきたようです。特に2015年の日本遺産の認定は、大きなターニングポイントになりました。住民の方も、便利さを求めて引っ越す方もいますが、坂の街を好んで住み続ける方もいます。それに、山手にある家の多くは、古くても文化財ではないので手を加えやすい。だからクリエイティブな若い人がたくさん移住してくるのだと思います。
松村:  日本の大きな街はほとんどが戦争で焼けてしまいました。戦災がなかった尾道のような街はちょっと見当たりませんよね。
豊田:  戦争がなかったら、現在の日本はヨーロッパ型の価値観に近かったんじゃないかと思ったりします。もしも東京に戦前の街なみが残っていたら、文化財を大切にする法律が大きな位置を占めていただろうし・・・。でも実際は、都会で火事が起きるたびに消防法が厳しくなり、空き家対策や過疎対策がやりづらくなったりしています。
松村:  最近のボヤは店番がいなくなったことが原因になっているそうです。専門家の中には、若い人を呼ぶことが一番の防火対策だと言う人もいるくらいです。
豊田:  私たちのNPOは、尾道の空き家に若い人をどんどん送り込んでいます。尾道も年に数回はお年寄りが住む家に火事が起きますが、若い人が増えたので対処が早くなりました。



前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  8  9  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP