講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.社員大工による地域のリフォーム
4.社長の目が届く規模感
鈴木:  「ななこの手」というネーミングでお手伝いサービスをなさっていますよね。いつから始められたのでしょう。
湯前:  3年程前からです。ある方のマンションへ行くと、廊下の電気が切れたままになっていた。僕らには何でもないことですが、高齢者は脚立に乗るのも怖いことなんですよね。そこで近所のそれくらいのことならお手伝いできるだろうと始めました。無料でも構いませんが1時間3000円にしています。定額にしておいた方が頼みやすいですから。
中村:  面白かったのは、「洗濯機の下に猫が入り込んだから、助けて!」という依頼ですね。これはさすがに無料でさせてもらいました(笑い)。
湯前:  大工の手が空いているときにチラシをポスティングしているんですが、その方は冷蔵庫にでも貼っておいてくれたんでしょう。そのように何かあった時に思い出してもらえればいいんです。

日向建設は吹田へ来てまだ16年で、自分たちが作った家も少ない。でも中古市場には元施工と縁が切れた住宅がたくさん流通しています。そうした住宅を僕たちがリフォームしていれば、日向建設の家になるんじゃないかと思っています。僕は究極のリフォームは建替えだと思っているんですが、そういう状態になっていれば建替えの時にも真っ先に声を掛けてもらえるはずです。
鈴木:  最近のお客さんのニーズに傾向はありますか。
湯前:  すごく多様化していますね。何のために家を建てるのか、目的を絞り込むのが大変です。「借金を払うのはあなたですよ。本当に新築が必要なんですか。ひょっとすると中古の方がいいのかもしれませんよ」というところから話します。家の大きさもどんどん大きくしたがる。面積は一人世帯50m2を目安にして、1人当たり10 m2ずつ足せば十分な大きさの家になります。「大きい家にして、掃除するのはあなたですよ」と言います。お客さんにぴったりはまった器を提供することは意識しています。
松村:  設計はどなたがなさるのでしょう。
湯前:  お客さんの要望を聞いてプランニングするのは僕で、CADの図面は女子社員が描いてくれます。極端な話、設計者が1人と大工2人、それから事務が1人いれば工務店は成り立ちます。これなら年間1億で食べていけます。規模が大きくなると、組織を回すエネルギーが要るでしょう。ですからあまり大きくしたくないですね。今の規模だからできることは多いですね。
松村:  日向建設のやり方を支えているのは、ちょうどよい規模なんでしょうね。この規模なら、湯前さんがすべてのお客さんと会って話ができますよね。規模が大きくなって営業マンが営業をすると、上手く行かないことも多くなるでしょうね。
湯前:  そうかもしれません。でも職人にしっかりと僕の考えを伝えて教育してやれば、数が増えても大丈夫だとは思っていますよ。



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