講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


7.住宅メーカーの個別対応と営業マン
松村:  ここまで話題になったようなことを住宅メーカーがやると、別の困難も出てくると思うんです。住宅メーカーの組織的な制約になりますが、個々の営業マンに徹底できないことは、現実には上手く売ることができない。昔はプラン提示がそのまま生活提案ということになっていて、とりあえず決まったプランを売ればよかった。でも、お客の暮らしぶりを聞いて菜園なんかいいのではないですかって提案するとなると、営業行為はかなり高度な技になりますよね。
瀬戸口:  本当の設計になります。当社の50周年商品として「100のアイテム」という提案メニューを作って、カタログを営業に説明したのですが、お客様に十分伝わらなかった。その大きな反省があって、今回の新商品では「外張断熱通気外壁」「XE(ジー)コート」「太陽光発電」だけ覚えろと言っています。結局、100を言って一つ伝わるより、3つ言って3つ伝わった方がお客さんのためになるし、我々も努力できる。本当に建築的な提案をしていくやり方と、ある程度パッケージを用意するやり方の両方が必要だと思います。
松村:  ツールの揃え方が昔とは違いますよね。昔は技術カタログだけでした。久々に住宅メーカーのカタログを見て驚いたのは、生活スタイルに合わせて渡せるものが用意されている。
瀬戸口:  建築的な提案をしていくやり方としては、当社では「リビングサロン」というサービス窓口を運営しています。営業マンが出向くのではなく、お客様に来ていただいて設計者が直接対応してプランづくりをします。やはり昔みたいに同じものがたくさん売れる時代ではない。そうすると個々の設計者の能力が顧客満足度に直結しますから、そこをどうレベルアップしていくかが課題になってきています。
中村:  それで思い出しましたが、先ほどの睡眠空間は営業マンには難しすぎてもはや語れないんです。ですからうちの研究所で睡眠を研究している者が一人いますので、もし睡眠についてきちんと知って家づくりをしたいという要望があれば、そいつを呼べということにしています。
松村:  生活の話をするとき、生半可な知識じゃお客の方が満足できなくて、プロが出ていかないと追いつかないような状況が生まれつつあるんでしょうね。



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