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鈴木: |
そのソフトというのは、例えばどの様なものですか?
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角野: |
現在、各地で行われているのは、既存の集落や農村と組み合わせて、ある種のライフスタイルを提案することです。そこには、ニュータウンの中だけでは魅力を形成できないという事情がある。例えば、彩都もそうでしょう。
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鈴木: |
それが現在も続いているということですか?
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角野: |
そうした売り方でないと売れない時代になってきています。ライフスタイルを売るという現象が、興味深いことは確かです。戦後に始まった、極めて単純なライフスタイルを前提とした街づくりに回帰できないことは、売る方も分かっている。そして、売れる住宅地を作るために何がモデルになるのか、と考えていったときに、行き着いた場所の一つが、戦前の郊外開発にあったユートピアづくりの発想だったのではないかと私は思っています。
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鈴木: |
その実例をお話願いますか?例えば、彩都は環境共生とか住民参加といった活動が行われていますが…。
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角野: |
実際は、ソフトだけというのは難しいですね。例えば、カルチャータウンのワシントン村では、ワシントン州の戸建住宅地を模していて、ハードの部分が用意されている。その上で、お父さんが芝生を刈って、庭でバーベキュウ、というようなライフスタイルを売りにしている。クリスマスのイルミネーションの名所にもなっています。
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鈴木: |
ライフスタイルを、町ぐるみの商品として売り出しているということですよね。確かに、ライフスタイルは町全体で支えられるものと思いますが、やっぱり苦しそうな気がしますね。
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角野: |
確かに苦しいのです。なかなかそうしたライフスタイルに実感が持てない。洗脳されたかのようにぴたっとはまる人もいて、何年間かはそのライフスタイルを続けようとするのですが、ごくごく普通の生活でいいのでは?という思いが出てきますよね。
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鈴木: |
提供されているものはフィクションぽいっていうことですよね。
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角野: |
そういう用意されたライフスタイルを演じ続けるのはしんどいのです。最初のうちは緊張して演じるものの、みんな次第に疲れてきます。それでも、一般の商品と違ってその耐用年数は長いので、これは大阪都市圏の何年代のスタイルという形で、次々と蓄積されているように思います。
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