ライフスタイル考現行


3.駅舎の中の古本屋
松村:  至る所で知り合いに出会うのは、地元出身者ならではの強みですね。駅舎を利用するに当たって、何か条件はありましたか?
中尾:  駅舎を管理することなどが求められました。観光客の中には落書きを残していく人がいたりしますから。最終的には10ページほどの企画書を作り、対面プレゼンテーションもしました。古本は次々に譲り受けていくものなので、大事にして欲しいという思いがあります。ですから、列車の待ち時間にちょっと読んでみて、本当に気に入った本があれば買ってもらうのが理想です。2023年頃には南阿蘇鉄道が全面復旧する見込みです。JRに乗り入れる話も進んでいて、それが実現すれば列車の本数が今までよりも増えると思います。現在は金曜日と土曜日しか開けていませんが、妻とは「お客さんが増えるようなら平日も開けたいね」と話しています。
松村:  ひなた文庫には、どの様なお客さんが来るのでしょうか?
中尾:  遠方からの旅行者が7割ほどを占めます。南阿蘇観光はもちろんですが、鉄道好きの方々も多く来られます。一時期「南阿蘇水の生まれる里白水高原」という駅名は日本一長い駅名だったので、鉄道ファンの間では結構知られた駅なんです。もっとも、開業に当たって店舗の吸引力なども検討したので、古本屋だけで暮らせるとは思いませんでした。そこは二人とも割り切っていて、基本的な生計は家業のたこ焼き屋で賄うという考えでした。
鈴木:  家業のたこ焼き屋あってのひなた文庫なんですね。店名の上に「Octopus books」と書いてある理由がやっと分かりました。
中尾:  先ほどお話ししたように、ひなた文庫はたこ焼き屋の駐車場の日向で生まれました。お客さんとの会話のきっかけになればと思って、こうしたディスプレイをしています。残念ながら気付く方はあまりいませんけど(笑い)。




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