自宅に住む

温熱環境リフォーム 設計・施工について

合同会社TAKAOスタジオ代表社員 石崎竜一
 日本の住宅ストックの7割は、昭和55年省エネ基準相当、もしくはそれ以下の断熱性能で、室内温度がとても劣悪である。入浴中の年間死亡者は交通事故よりも多く、入浴事故の8割以上が65歳以上の高齢者である。一般社団法人ベターリビングでは「温熱環境リフォーム設計・施工ガイドブック」を作成している。
 良好な温熱環境リフォームを実現する方法として、温熱環境の対策を多面的に用意し、段階的(レベルⅠ:水回りを暖かくする、レベルⅡ:日常生活空間を暖かくする、レベルⅢ:住宅全体を暖かくする)に対策範囲を広げること提案することが考えられる。
 温熱環境リフォームでは、最初の段階で居住者のライフスタイルと温熱環境に関するヒアリングを行うことが重要なポイントになる。建築診断では目視や設計図書・建設年代からの推定と同時に、放射線温度計や赤外線サーモグラフィを使って、居住者と共に実際の温度を測定し確認することで、住まい手に分かりやすく伝わる。
 リフォーム実施後は、居住者の方と、温度がどのように変化するのか、お話しながら暮らし方のアドバイスをしていただきたい。温熱環境リフォームでは、断熱リフォームと共に日射遮へいと換気計画の検討が必要になる。リフォームにより気密性が高まった住宅では、換気設備の定期的なメンテナンスの必要性も伝えなければならない大切なことである。
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在宅医療とフレイル予防の最前線

医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長 佐々木淳
 医療法人社団悠翔会では、一都三県、10カ所で在宅クリニックを展開し、76名のドクターの他、看護師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、理学療法士等の多職種が連携し約3500人の在宅患者を24時間体制で見守っている。年間800名の看取りがあるが、そのうちの7割は自宅である。
 悠翔会では「明るい超高齢社会」の実現を目指して、できるかぎり身体的・精神的・社会的に良好な状態を保つことを目標にしいている。そのため高齢者の定義自体を見直し、高齢者の疾病構造に適した最適な医療を行っている。例えば、薬のリスクを認識すること、予防を重視すること、低栄養を防ぐこと、オーラルフレイルを予防することなどを重視している。
 また、高齢者の福祉は地域で解決すべきことが多い。高齢者福祉の三原則である「人生 (生活) の継続性」「自己決定の尊重」「残存機能の活用」にもとづき、コミュニティの中で社会とのつながりを保ちつつ最後の見取りの時まで過ごせる環境を整える。それには「住まい」の環境も極めて重要である。
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スウェーデン『住み続ける』社会のデザイン−前編

東洋大学教授 水村容子
 スウェーデンは立憲君主制の民主国家であるが、人口は近年1千万人台に達したところである。国土の規模は日本の1.2倍であるが、人口密度は20人/km²と低い。GDPは4,926億ドルで世界第23位、人口規模に比して経済活動は活発である。
 20世紀初頭まではヨーロッパでも最貧国の位置にあったが、永世中立国の立場を守り、特に第二次世界大戦後は福祉国家として有名である。住宅に関しては、現在は協同組合所有と個人所有の何れかが一般的で、経済困窮者に対しては住宅の直接供給ではなく家賃補助が一般的である。しかしながら、1990年以降の住宅政策は、社会民主的な考え方から自由主義的な方向に大きく変化を遂げており、特にEU加盟に伴い民間市場重視に変わっている。住宅政策に関しては“No Policy”が実情で、ストックホルム、ヨーテボリ、マルメの都市部では都市化の進展と難民の大量流入により大きな住宅地格差が生まれている。特に1960〜70年代に開発された郊外住宅地に高齢者や低所得者が集中し、かつての中流階層の住環境とは一変しているところも多い。
 一方、高齢者や障害者が自宅で住み続けるための基本的な仕組みは整っている。計画建築法の2010年改正では個人住宅であってもサニタリールームのバリアフリー化が義務付けられている。また、テクニカルエイドサービスによる住宅改造や各種のホームヘルプサービスは充実している。在宅緩和ケアに関しては、各医療圏ごとに配置された基幹病院が緩和ケア病棟だけでなく緩和ケアの訪問診療を行う「在宅緩和ケアユニット」を持っており、入院でも訪問でも緩和ケアが受けられる体制が整えられつつある。
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スウェーデン『住み続ける』社会のデザイン−後編

東洋大学教授 水村容子
 スウェーデンの高齢者住宅には、「シニア住宅」「安心住宅」「サービスハウス」「看護介護住宅」の4種類がある。ただし、どのようなカテゴリーの住宅を供給するかは基礎自治体であるコミューンがその権限をもっており、実際には多種多様である。
 ストックホルム市の場合は、上記の4種類の住宅があり、サービスハウスと看護介護住宅は日本の要介護認定と同様にニーズ判定がないと入居できない福祉住宅である。シニア住宅と安心住宅は一定の年齢制限はあるが、その年齢以上であれば入居可能である。
 最新のシニア住宅 (年齢65歳以上) では、ICTの機器類やシステムが多用されており、薬剤管理やスケジュール管理などに利用されている。安心住宅 (年齢75歳以上) は常駐のスタッフが配置されている。シニア住宅、安心住宅ともに既存の建物をコンバージョンして開設する事例が多い。
 一方、年齢40歳以上を対象にした「シニア型コレクティブハウス」もある。個人の専用住戸以外に共同台所や食堂、その他の共用施設があり、毎日夕食はコモンミールとして入居者全員で食事をとる形式である。
 スウェーデンの高齢者住宅のトレンドは、孤独への対応と集合住宅コミュニティの構築による共助意識の啓発である。高齢期、終末期の人々が集まって住むことで孤独を解消し、共に助け合い、そこに様々な社会的なサービスを組み合せて高齢化に対応しようとしている。
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シニア向けの生活サービス・パッケージ「伴奏パック」の研究

旭化成ホームズ(株) シニアライフ研究所
 旭化成ホームズでは、住宅のハード・技術系の研究所以外に、住まいのソフトを総合的に研究する「くらしノベーション研究所」を有しており、その傘下にシニアライフ研究所がある。
 旭化成ホームズの高齢者専用の住まいとしては、「へーベルビレッジ」があり、月1回の訪問・生活相談サービス付の50〜70m²の賃貸住宅の取組みを行っている。
 シニアライフ研究所では、自立期シニアを対象に、2015年8月からの6か月間、「伴奏パック」という高齢者向けの生活サポートを提供する試行調査を行った。
 試行結果は概ね好評で、利用者の「からだ・心・行動」の変化が明らかにあった。また、これを契機とした「荷物整理」「リフォーム」「住宅の建替え・処分」等の潜在的な需要の掘り起こしがあった。今後はこの結果を踏まえて、新たなビジネスの可能性を探っていく予定である。
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超高齢社会の住まい ー住宅相談から見えてくることー

NPO法人 高齢社会の住まいをつくる会 理事長 吉田紗栄子
 NPO法人高齢社会の住まいをつくる会は、全国のバリアフリーの建築専門家が集まって、高齢になっても、障がいがあっても住み続けられる家づくりを進めるための活動をおこなっている。
 ハウスメーカーでも高齢者対応の取組みが進んでいるが、住宅相談の現場では様々な課題が浮かび上がっている。相手の立場にたって、「聞きとる力」が十分でないために、クライアントが満足できる回答に辿り着かない場合が多い。クライアントの長い生活の中からヒントを得て、提案力を持つことが重要である。  NPOでは、住まいのバリアフリーを今一度根本から見直して、「新・バリアフリー宣言」を行った。住み手の加齢や障がいに対して対応力、包容力、支援力のある住まいづくりをめざしている。
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