高齢者の早めの住み替えと住宅資産の循環活用について
高齢者住宅協会理事・ミサワホーム(株) エグゼクティブアドバイザー 吉田肇
高齢者の早めの住み替えと住宅資産活用には、多様な相談にアドバイスできるコーディネート体制としてもプラットフォームと、住み替え・住宅資産活用の支援ツールが必要と考えられます。一般社団法人高齢者住宅協会が事務局となる「高齢者の住宅資産の循環活用に関する検討調査」では、高齢期のきっかけをつくる簡易ツールとして「成り行き任せの判定ツール」を作成しました。
(1) 新住宅双六における早めの住まいの検討
高齢者世帯の持ち家率は80%を超える高いものですが、高齢者世帯の持ち家は、子ども世帯に住み継がれない「空き家予備軍」になる可能性が高いと考えられます。
要介護になってから住まいのことを考えるような「成り行き任せ」では、持ち家の円滑な循環活用にはつながらないことが考えられます。
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2023年の1月から10月に実施したマザアス関連セミナー参加者アンケート (n=650) では、将来の暮らし方について70%が今の住宅に「住み続けたい」、30%が「住み替えたい」とのことでした。
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住み続けたい」70%の方々のその理由 (複数回答) は、「自宅に愛着がある」50%、「選択肢が浮かばない」80%、「お金が不安」80%でした。
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「住み続けたい」30%の方々がいつ頃住み替えを検討するかについては、「直ぐに」10%、「1-2年先」20%、「3-5年先」70%でした。
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そしてこの調査と同時期に実施したマザアス関連施設の契約120件の調査結果では、介護施設を選んだ方について、「家族と等」90%、「本人」10%でした。
人生100年時代・新住宅双六の時代において、住宅資産の循環が円滑に進むためには、ご本人が要介護などになる前の、早めに住まいのことを検討するための支援が重要と考えられます。
(2) プラットフォームの構築
「高齢者の住宅資産の循環活用に関する検討調査」は、早めの住み替えによる持ち家の円滑な循環活用を促進するための支援体制 (プラットフォーム) と支援ツールの構築を目的に実施されました。(検討調査委員長:東京大学大学院工学系研究科大月教授、検討調査委員:協会会員住宅会社、事務局:一般社団法人高齢者住宅協会)
高齢期の住まい方の相談支援は、「相談窓口」の設置だけでは機能しません。高齢期の住まい方の実践を促すためには、住まい方の相談から業者の選定・契約まで、相談者に寄り添い、ワンストップに伴走支援することが必要です。そのためには住宅のことだけではなく、高齢期の住まい方からお金、終活のことまで、多様な相談にアドバイスできるコーディネート体制として、持ち家高齢者の相談機能 (中間組織) と、各種専門家、事業者の連携体制を組み合わせたプラットフォームセットが必要と考えられます。
中間組織が相談者と事業者をマッチングし、成約した場合の手数料をプラットフォーム事業の財源に充てることが考えられます。
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