郊外住宅地における空き家問題の現在

(5)まちづくり担い手による空き家活用

 所有者が空き家活用を考える上で、信頼できるところに運営を任せられるかということが大きな悩みどころになりますが、事例1および2のように、地域で信頼されているまちづくりや生活支援の担い手に、「空き家を是非地域のために使ってください」と所有者から申し出るケースがあります。
 また、世田谷区では「地域共生のいえづくり支援制度」が、区内の家屋等のオーナーによる、自己所有の建物の一部あるいは全部を活用したまちづくりの場づくりを支援することで、地域共生のまちづくりを推進し、世田谷区民の暮らしやすい環境と、地域の絆を生み出し育んでいくことを目的に進められており、オーナーと運営者(とのマッチングを、一般財団法人世田谷トラストまちづくりが“空き家等地域貢献活用相談窓口”として進めています。
 こうしたマッチングの実績をあげている団体もありますが、マッチング不成立も多く見られます。不成立の大きな要因は、家賃折り合い 家族からの反対の他、建築法令適合への負担(コスト面・心理面)があげられます。法律の合理化・整合化と同時に、戸建住宅をシェアハウスや福祉施設に用途転用する際に、信頼できる相談体制が求められます。

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(6)空き家関連ビジネスを促進するために必要な取組み

空き家の利活用には、マッチングやリノベーション(企画・設計・施工)の他に、[1] 空き家の建物としての状態が利活用に適しているかを診断すること(ホームインスペクション)、[2] 家に残っている家財の片づけ、[3] 空き家状態のときに建物劣化を防ぐメンテナンス、などのサービスが必要になります。
実際にビジネスとして進めている事業者もありますが、ホームインスペクションを除いて、それぞれのサービスを単体で進めるというより、利活用を進めるために付随するサービスとなっています。
こうしたサービスが、空き家所有者や利用者の事情や意向に対して、レジリエント且つシームレスに対応できるような、信頼できる体制づくりがこれから必要な取組みになります。

[1] ホームインスペクション
・ホームインスペクションは、信頼できる、独立した第3者として、住宅の客観的な状況を顧客にお知らせするものです。仲介やリフォーム工事は行わない。顧客から工事を依頼されることもありますが、中立の立場を保つために、工事は別の事業者が行うこととしています。
・ホームインスペクションでは、目視によるひびわれやしみの有無などの確認から、レーザービームによる建物傾きのチェック、壁の裏側や柱、給水管等の検査などを行います。(フィーはどの程度まで検査を行うかで異なります。)
・日本では、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会がホームインスペクターの育成や消費者への情報公開、建物知識の普及活動を勧めています。

[2] 家の片づけ・管理・活用のコンサルティング
空き家の利活用マッチングに携わる事業者の中には、空き家となる前の段階の、実家の片づけかたからアドバイスする方々がおられます。

[3] 不動産会社による空き家管理サービス
劣化の原因はやはり湿気・水です。定期的な通風を行わないと、カビが生え、湿気が壁などに入り込むと、そこから腐朽がはじます。雨の壁や屋根などへの漏れを放置しておくと、腐朽の原因になります。
不動産会社の中には、定期的な風通しなどを行わないと、売れる状態、貸せる状態にならないとオーナーにお話して、定期的な見回り・風通しなどを行っているところがあります。(費用はケースバイケース)

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