第5回の今回は、シニアライフ情報センターの池田敏史子さんをお招きし、2004年1月にシニアライフ情報センターの会員に対して行った高齢者の住み替えに関するアンケートの結果や、住み替え相談を下に、今現在、高齢者が何を考えていて、どのようなところに住み替えをしたいと思っているのかについて講演をしていただいた。

■主 催     高齢社会研究会
 
■日 時     平成17年1月28日(金)   18時00分〜20時30分


■会 場 住宅生産団体連合会 会議室
 
1.挨拶
園田眞理子(明治大学助教授)
2.第1部 講演「終の住まいの探し方〜昨今の高齢者の住み替え相談から見えてくること・考えること〜」
  講師 池田敏史子氏  シニアライフ情報センター事務局長
3.第2部 座談会
  司会進行 園田眞理子(明治大学助教授)
  メンバー 高齢社会研究会
    住宅生産団体連合会会員企業メンバー
 
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1.高齢者の居住ニーズは、近年変化してきている
 

以前は老後すぐに老人ホームなどの施設への住み替えが多かったのだが、介護保険の普及などもあり、従来の重装備の施設というよりも、限りなく自宅に近い環境で、困ったときに必要なサービスを受けて住むという意識が強くなってきているようだ。
ポイントとしては、介護期を短くするために半自立期をいかに過ごすか、なのだが現実としてそれに適したものはまだ少ないようである。
具体的な意識の変化は以下の五点にまとめられる。

1−1.大規模→小規模
  一つの建物に小規模(30〜50人)なものを希望しており、グループリビングのようにお互いが関わりあいながら暮らすというよりは、お互いが少し距離を置いて、ゆるやかに暮らしていきたいようである。
1−2.施設→住宅
  元気なうちは、自立した生活を送りたいという意見が多い。また、重装備の施設は、共用部分を重視した設計が多く居室空間としては満足いくものは少ない、そのようなところでの依存した生活が老化を早めてしまうという意見もある。
まず、安全、安心が確保された自立できる住まいに住み替え、その後、いざというときに介護系に住み替えるパターンも増えてきている。
1−3.サービス付→オプションサービス
  サービスが全て用意されている施設ではなく、現在はサービスの選択性を求める声が多い。自分でなんとかしたいという高齢者が多く、元気なうちは見守りサービスなど必要最低限の利用とし、無駄な出費は抑えたいようだ。
1−4.分譲・利用権→賃貸
  最近では、収入に関係なく賃貸に意識的に入居する高齢者が多い。利用権方式は住み続けの保障が不安定であり、分譲は管理費がサービス代込みのため通常の管理費より高く設定されており、所有している限り管理費の支払いが続くため、これらのことがネックとなるようだ。
1−5.施設コミュニティ→地域コミュニティ
  重装備の施設に入ってしまうよりも、高齢者自身が一歩外に出て地域資源を利用して暮らしていくという考えが徐々に増えてきているようだ。積極的になんとかしようという高齢者が増えているのだろう。
 
2.海外ロングステイ ―タイ・チェンマイの事例―
 

最近、自立期の間を田舎や海外といった自宅外で過ごす暮らし方が注目されている。
日本人の高齢者が増えているタイのチェンマイで調査結果の概要は以下の通りである。
調査では、移住者の年齢は50〜60代の早期リタイア者が多いようだ。滞在期間としては平均2.5年で、長い人では7年間もの人がいる。その間、日本の家は家族が住んだり、賃貸に出したりしている。
特徴的なのは、やはり家賃や生活費の安さであり、年金内で日本では考えられないくらい豪華な暮らしができるようだ。
また、医療保険は事故や医療に対応できる海外旅行保険が適用でき、設備の整った私立病院には日本人用のコーディネーターがいて細かいところまで相談に乗ってくれる。不安やリスクを軽減できていることもロングステイ増加の原因であろう。
物価の安さはもちろん、タイの国民性ならではのゆったりした暮らし方ができるのもロングステイのいいところ。言語や文化の違いはあるけれど、その違いを楽しんでいる。

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  1.高齢者優良賃貸住宅(高優賃)は規制が厳しいなどで供給が増えていかないようだが、それでも注目度は上がっているのか?
「高優賃」という形で上がってきているのではなく、高優賃も含めて『ケア型対応住宅』と呼んでいるものは、かなり増えてきている。しかし、規制が厳しい・誰でも入居できるわけではないという条件は相変わらずである。
  2.ハード面の充実を求めるのなら、駅前のマンションではダメなのか?
実際そういう人もいるが、駅前のマンションにはコーディネーター役がいない。介護保険の改正で、地域介護を基本理念に掲げて、小学校区に一つくらいの割合でコーディネーター役をつくろうとしている。この仕組みがうまくいけば駅前マンションでも問題はないのでは。
  3.10年後、20年後の話で、住み替えをするのと在宅で住み続けるのとどちらの選択をするべきと考えるか?
できれば頑張って自宅にいたい。けれど誰が次のステージ(要介護状態になったとき)までの対応をサポートしてくれるのか。そういう点、NPO等がコーディネーター役をできるようになるとよいのではないか。また、そのようなことができる国家資格、専門性も必要だと思う。そうした人材育成も課題になってくるだろう。
  4.高齢者のニーズで地域コミュニティが比較的大きいが、居住コミュニティというのをどう作っていくのか?

今までは有料老人ホームなどは外部から入ってくることを嫌ってクローズされていた。地域密着サービスの中では、むしろケア付き住宅等を拠点にして、人や設備などを外の人に使ってもらい、行き来できる環境をつくることが大事である。

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  5.これからは高齢者だけでなく、多世代の人が住める形というのが重要になってくるのか?
理想的に言えば、同世代のみが集まって住むよりは、多世代の方がいいと思う。しかし若い人とお年寄りが一緒に暮らすと別のサービスが発生してしまうので難しい。また、多世代で住むとしても、どうしたら若い人に入ってもらえるのか。ある施設で、多世代がごっちゃになって住んでいるものがあるが、それは駅前という好立地であり若い人は勤めに便利だから住んでいるようである。当然世代間交流はつくられていない。