講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. HATCHi金沢
小津:  HATCHiは、1960年代半ばに建った商業ビルをホテルとして再生したもので、リノベーション会社のリビタが手がけています。長年にわたって仏壇屋さんが入っていましたが、北陸新幹線が開通した頃に空きビルになってしまった。ビルオーナーへ売って欲しいと相談し、僕たちがリビタへ仲介することになりました。路面電車が走っていた頃までは、ここ橋場町は金沢を代表する繁華街だったんですよ。そのためこの建物の地下は、ちょっとした飲食店街になっていました。
松村:  確かに浅野川大橋の南詰に位置した良い立地ですね。
小津:  基本的にファサードは変わっていませんが、新たに鉄骨製の庇を設けたりしています。近隣には主計町(かずえまち)という茶屋街もあり、この場所も景観条例の対象になっています。そのため外装の変更部分は指定色にする必要があり、鉄骨の錆止めの色を弁柄色と見なして貰いました。金沢は、まちづくりに関する条例の多いまちでこういったリノベーションでも景観に対して考えさせられることが多いです。
耐震補強は、前面道路側に枠付き鉄骨ブレースを設置した程度で済みました。実は建物オーナーが設計図書を持っていなかったので、このビルのリノベーションは厳しいと思っていたんです。でも、なぜかセキュリティ会社に構造計算書が残っていました。その構造計算書とコンクリートコア抜きサンプリングで、ようやく売買が成立しました。
鈴木:  階高が大きな建物ですね。しかも、直階段の階段室にアート作品が置いてあったりして、広々とした感じがします。
小津:  一見すると4階建てに見えますが、3階建てなんですよ。ですから2階と3階の客室には、2段ベッドが余裕で入っています。最大3名の個室と20名のドミトリーがあって、合計90名ほどが泊まれます。ドミトリーの利用は外国人の方が多いですね。宿泊費が安いので、ここを拠点にして大阪や東京の観光に出かけたりする方も少なくないようです。飲食店街だった地下には、客室だけでなくシェアキッチンなどがあります。宿泊者がスーパーなどで買い物をしてきて、ここで自由に料理できるようになっています。





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