講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
石井勇さん「街中の本屋の可能性−MINOU BOOKS&CAFE」


1.地元で本屋を開くまで
2.気付いたら地元で本屋さん
3.MINOU BOOKS&CAFEのコンセプト
4.本屋とカフェの相乗効果
5.伝建地区の元魚屋をリノベーション
6.デザイニング展で学んだこと
7.街中の文化を育てるお店
8.ネット社会が全国の小さな本屋をつなぐ
9.街中の本屋のこれから
10.街まとめ



1.地元で本屋を開くまで
鈴木:  今回は福岡県うきは市で「MINOU BOOKS&CAFE」(ミノウブックス&カフェ)を営んでいる石井勇さんのライフスタイルを伺います。うきは市の民家や棚田について研究されている九州大学の菊地さんにも参加して頂きました。まずは石井さんのプロフィールと本屋を始めた経緯などからお話し下さい。



石井:  うきは市は僕の出身地です。実家は花木屋を営んでいて、生け花用に育てた枝を出荷しています。祖父が行っていた頃は植林用の苗木を育てていましたが、父の代から生け花用の花木に鞍替えしたそうです。本屋を自営するようになったのは、こうした家族の働き方を見て育ったことが大きい気がします。
ミノウブックス&カフェをうきは市の筑後吉井に開いたのは2年4ヶ月前になります。地元に戻ってきたのは31歳の時で、それまでは福岡市にいました。カフェ&ブックス・ビブリオテークというお店が福岡に出店する時、ひょんなことから本屋の担当になりました。オープニングスタッフとしてカフェを担当する予定でしたが、本屋のスタッフがオープン前に足を悪くしてしまったんです。
鈴木:  その本屋さんはどんなお店ですか?
石井:  天神の商業施設の中にあるブックカフェで、取次を使っていませんでした。30社から40社くらいの出版社と直接取引していて、扱っている本は通常の文芸書より美術関連の方が多いお店でした。出版社と一緒に展示イベントを開いたりして6年間ほど楽しく働きましたが、地元に戻って独立したいと思いが強くなって辞めました。
もっとも、その時点では何をするか決めていなかったんです。そういう話を知り合いの写真屋さんにしたら「人手が足りないから少し手伝って」という話になって、そちらの店で1年間ほど働きました。その写真屋さんは、現像プリントや七五三などの記念撮影だけでなく、ギャラリーも運営していたんです。近くには幼稚園から高校までたくさんの学校もあったので、親子連れが来るだけでなく様々な年代の子供たちも集まる場所にでした。今から思うと、地域に根ざした場所の素晴らしさを教えてくれたのがこのお店でした。



1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP