講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


7.計画された近代都市の限界
島原:  ニュータウンとは、いわば寝るためや子育てのための街です。今の若い世代は共働きが多い。郊外に専業主婦と子供のための家を買い、旦那だけが長距離通勤するというライフスタイルには無理があります。実際の働き方や暮らし方が、こうしたニュータウンの思想から乖離してしまったので、第2世代の人口流出が激しく、それを支えるインフラも過剰投資に見えるんじゃないでしょうか。
鈴木:  ニュータウンが出来た頃から、近代的な街がつまらないという指摘はありまし、学術的な批判もなくはなかった。ただ当時の日本は、煤煙だらけの都市から郊外へ移り住むことが夢だった時代なので、ジェイコブズが指摘したようなことはピンと来なかったのではないかと思います。
木下:  一度通らないと分からなかったのかもしれませんね。失敗しないと共有できないことってありますから。
島原:  コルビジェの都市計画は、当時の過密都市の環境悪化に対する解決策ですし、ジェイコブズの時代のマンハッタンのダウンタウンも、いわばスラムに近い状態だったと言われています。ニュータウンはピカピカに輝く憧れの街だったんですね。ただしそれを支えていたのは、正社員の世帯主が専業主婦と子供を養うという、企業がある意味で社会福祉も負担していた時代のライフスタイルでした。
ところで、都心からすぐ近くの湾岸地区には、タワーマンションが林立しています。子育て中の共働き夫婦にも最高の通勤利便性があるかもしれませんが、センシュアス・シティの指標で測ると良い評価になりません。住民の多様性に欠けるからです。ジェイコブズが指摘し、今回の調査でも確認されたように、住民の多様性によって都市の魅力が生み出されます。新築物件が急進的・画一的に供給されると、住民の多様性に欠ける街が生まれますが、時間が経過しても住民の入れ替わりがないようだと、現在の郊外ニュータウンと同様、オールドタウン化という問題も起きると思います。





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