講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.社員大工による地域のリフォーム
3.商圏5kmのリフォームに特化
松村:  この場所を拠点に選ばれた理由はなんでしょうか。
湯前:  当時はビル・マンションの会社だったので、マンションに囲まれたエリアを選びました。昭和40年代に開発された街ですから、そろそろリフォーム需要が出てくる時期と思いました。実際、団塊世代が定年後の終の棲家を求めて増改築するケースが目立ってきました。こうした需要は爆発的に現れているわけではありませんが、それぞれの家庭に何かきっかけがあって、ジワッと出て来ています。20年間も住んでいればキッチンだってガタが来ますから。
松村:  商圏はどのくらいの範囲を想定されていますか。
湯前:  商圏は5kmで十分です。それで12万世帯はありますから。極端な話、シェア100%にできれば商圏は1kmでいい。会社から近い場所の方が力を発揮できるはずなんです。この近辺の住民なら口コミの力で「あそこで工事をしていた会社だ」となりますから。もっとも工務店はたくさんあります。ガソリンスタンドより多いかもしれない。
鈴木:  地域のコミュニティ・スポット作りも手伝っておられますよね。どういったきっかけでお手伝いされるようになったのでしょう。
湯前:  コミュニティ・スポット作りは、うちの大工に手刻みの仕事させてやりたくて引き受けました。地域のことは頼まれてだんだんとやるようになりましたね。
松村:  ビルやマンションの仕事には、もう未練はないですか。
湯前:  葛藤はありました。木造はめんどくさい。ビルやマンションをやっていた時には、投資金額と利回りだけでお客さんを納得させられましたが、こっちはテレビの位置まで決めないといけない。打ち合わせも日曜や祝日が多いですし。でも新成人がこれだけ減っている時代に年間60〜70万棟も新築し続けられるわけがない。ストックは既にあるわけですから。
松村:  木造のノウハウはどちらで学ばれたのでしょう。
湯前:  フランチャイズに入って勉強しましたが、2年間やってみても大したノウハウはなかった。リフォームで利益を出す体制を考えて行ったら、それが大工の社員化だったんです。社員は月給をもらっていますから、空いた時間にパソコンも電気工事も覚えろと言われればやらざるを得ない。かつてはそういう事務作業がいやだから職人になったのかもしれませんが、もはや腕だけでは仕事をやって行けない時代です。書類作成ができなければ土俵にさえ乗れません。
松村:  なるほど、ストック化すると職人が社員化するわけですね。
湯前:  消費者のニーズを見ていれば、やるべき方法は見えてきますよ。違いはそこであきらめるかやってみるかです。リフォーム作業はお客さんの目の前で行われるので、工事中に受けるストレスはすごく大きい。密室に知らない人間がいるわけですから。でも、きちんと教育された男前の大工が行ってさわやかに対応すれば、「日向建設の大工は正社員だから、リフォーム中でもちょっと家を空けられる」というような評判が口コミで広まるわけです(笑い)。



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