講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
座談会「次代の住宅メーカーが目指す新機能」
中村 孝之 積水ハウス株式会社 住生活研究所
瀬戸口 正樹 大和ハウス工業株式会社 東京商品開発部
松本 吉彦 旭化成ホームズ株式会社 住生活総合研究所

1.コンセプトライフ−積水ハウス
2.インフィルとしての展開
3.増殖した限定プランへの反省−大和ハウス
4.賃貸併用住宅の可能性
5.現実の物件の中にヒントがある−旭化成
6.東京R不動産とひつじ不動産にみる新たなマッチング・サービス
7.住宅メーカーの個別対応と営業マン
8.住宅メーカーのビジネスモデルの行方
9.住宅メーカーの今後の課題1:戸建てからマンションへのトラバース
10.住宅メーカーの今後の課題2:「住まい」から「住む」コンサルティングへ
11.まとめ



1.コンセプトライフ−積水ハウス
松村:  この「ライフスタイルとすまい・まち」の連載も7年になります。初年度の2002年には、当時の住宅メーカーの動向を「住宅産業が夢見るライフスタイル」というコンテンツにまとめました。久しぶりに住宅メーカーの動向を取り上げようということで、この座談会を企画しました。まずは、連載に対する感想なども交えながら、各社の商品開発や事業企画をご紹介していただきたいと思います。
中村:  ホームページの感想を率直に述べますと、あまりに多くて全部読めない(笑い)。それは感想の一つとしまして、新しい予兆を捉えていて、テーマの構え方が興味深いですね。西川先生の「第5回:男の家→女の家→性別のない部屋」は当社でも取り組んでいる課題で、著書も読みました。角野先生の「第16回:郊外の持続可能性」もよかったし、最近の「第21回:東京R不動産」と「第22回:ネット時代の居住系マッチング・サービス」も面白かった。
積水ハウスとしてはライフスタイルを事業企画レベルでテーマアップしているわけではありません。むしろ最近は生活雑貨やインテリアがライフスタイルの入り口になっている気がします。新築住宅が減るなかで「住宅は建てなくていいや。でも自分の欲しい空間は作りたい」という動機がある。今和次郎の生活学の本に生活の循環という考え方がありますが、この傾向を捉える切り口として見直しています。簡単にいえば、基本的な要求である安心・安全の上に、健康、楽しみ、生きがいなどをどう提供するかということがライフスタイルからの取り組みではないかと考えています。
ただ「ライフスタイル」という言葉には、消費市場の中で生活を一つの価値観に押込めてトレンド消費をするようなバブル的なイメージがあるので、この言葉は個人的にはあまり使わないようにしています。
松村:  「ライフスタイル」で検索をかけると、例えばスペイン風といったキーワードが上位に来ますが、これはまさに消費の対象ですよね。
松本:  スタイルという言葉がファッション性に直結するんでしょうね。
中村:  それで2001年頃からコンセプトライフという企画に取り組んでいます。これは、自分らしい生活をどのように実現するかがテーマで、睡眠空間、菜園ガーデン、シアター、ペット共生などのテーマが挙がっています。
睡眠を例に採りますと、光と音楽と空調をコントロールすると、それが副交感神経やメラトニンの分泌に効いてくることを利用したもので、睡眠の浅い中高年層に向いています。また、ペット需要は根強いですし、プランターを使った菜園も大人気です。これは都内の展示場ですが、3階建ての屋上、つまり4階がプランター菜園になっています。お客様をエレベーターまず4階に案内するとインパクトが大きいのです。
図1:睡眠空間「Good Sleep」(積水ハウス)



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