住宅セーフティネット法の改正と身元保証サービス

 住団連 成熟社会居委員会 講演より

 
単身高齢者の増加傾向と持家率低下傾向が続く一方で、賃貸住宅の大家等の一定割合は単身高齢者の入居に対する拒否感を有しています。国は住宅セーフティネット法の改正による、大家と要配慮者の双方が安心して利用できる市場環境の整備、居住支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進、住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化を検討しています。さらに国は成年後見制度をさらに使いやすくするための、制度見直しに関する検討を進めています。

「令和6年度高齢者住宅施策について〜改正住宅セーフティネット法の概要等〜」

国土交通省住宅局安心居住推進課 横田企画専門官

(1) 高齢者等の住まいをめぐる課題

 高齢者世帯は2030年に約1,500万世帯を超える見通しです。さらに単身世帯は総世帯数の約4割近く (約2,100万世帯) と現在の世帯類型で最も多い類型で、2030年の単身高齢者世帯は約900万世帯に迫る見通しです。一方で令和6年4月30日総務省公表速報値によりますと、全国の空き家数は約900万戸あり、そのうち賃貸用空き家は約443万戸 (そのうち共同住宅は約394万戸) と非常に増えています。そして20歳代〜50歳代の近年の持家率は減少傾向です。
 高齢者や障がい者といった、住宅確保に関して配慮の必要な方々の賃貸住宅入居に関して、特に単身高齢者に対して賃貸人 (大家等) の一定割合は拒否感を有していることが、令和3年度国交省調査 (日本賃貸住宅管理協会の賃貸住宅管理業に携わる会員へのアンケート調査) で明らかになっています。そして、入居制限を行う「最も該当する理由」については、高齢者の場合、「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割となっています。株式会社R65による令和5年6月実施のアンケート調査 (全国の65歳を超えてから賃貸住宅を探した経験がある500名対象のインターネット調査) では、高齢者の4人に1人以上 (27%) が、“年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否”を経験しており、そのうち、半数以上 (55%) が、“複数回断られた経験がある”と回答しています。
 住宅確保要配慮者の入居に際して大家等が求める居住支援策についての令和元年度国土交通調査 (全国の不動産関係団体等会員事業者に対するアンケート調査結果) では、高齢単身・夫婦のみ世帯の入居については、「見守りや生活支援」「死亡時の残存家財処理」のニーズが大きいことが明らかになりました。

(2) 令和6年住宅セーフティネット法改正の概要

 以上を背景にした、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(住宅セーフティネット法) の改正が、令和7年秋頃に施行予定です。
 現行の住宅セーフティネット制度 (平成29年10月25日施行の改正住宅セーフティネット法による) は次の3つの柱で構成されています。
住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度 (セーフティネット登録住宅):令和6年3月末現在で900,096戸の実績がありますが、登録住宅の大部分では住宅確保要配慮者以外の入居も可能です。要配慮者専用住宅は5,874戸です。
登録住宅の改修・入居への経済的支援:要配慮者専用住宅について改修費補助・融資や家賃低廉化補助、家賃債務保証料等補助など。令和5年8月時点で補助制度がある自治体数は、改修費補助39自治体、家賃低廉化補助49自治体、家賃債務保証料等補助30自治体です。
住宅確保要配慮者のマッチング・入居支援:居住支援協議会 (不動産関係団体・居住支援団体・居住支援団体・地方公共団体) による物件紹介・マッチングや、居住支援法人による入居支援を行います。令和6年3月末時点での居住支援協議会数は142協議会 (47都道府県100市区町) 設立され、居住支援法人の指定数は851法人です。