『ごちゃまぜ』をめざして、
地域で経済が循環するまちづくりの可能性
-超少子高齢化、人口・世帯減少、プレAI期における後退戦への臨み方-
明治大学教授 園田眞理子氏
成熟社会居住研究会では明治大学建築学科教授の園田眞理子氏をお招きし、少子高齢化時代における住宅・住環境の危機的な状況と、それを脱するための解法についてお話を伺いました。
(1) 現状から脱却する解法
これは内田樹氏の言葉ですが、日本社会はこれから後退戦となるが、後退戦の要諦は「ひとりも脱落させず 仲間を守り 手持ちの有限の資源を できるだけ温存して 次世代に手渡すこと」と述べておられます。私自身も後退戦を意識して研究に取り組んでいます。
戦後約70年間の日本は、近代の核家族と、その住空間となる食寝分離・就寝分離による「n-DK」方式と、庭付き郊外戸建て住宅を上がりとする住宅双六が社会のベースになっていました。しかし、今や日本は空き家大国になりました。2003年から2013年の間に日本の空き家は1.5倍に急増しましたが、2013年の空き家等約820万戸のうち、約185万戸は耐震性等があり駅から1km以内の住宅です。しかし、日米のこれまで行われてきた住宅投資額の累積と、住宅ストックの資産額を比較すると、米国では住宅投資額に見合う資産額が蓄積していることに対し、日本では、投資額の累積を約500兆円下回る額のストックしか積み上がっていません。つまり日本の戦後70年間の住宅投資は「資産」とはなりませんでした。
私は、最近若い人たちにもはっきりと、日本の家はこのままで行くと「ゴミくず」になると言っています。
そして最近言われていることが、中流階級のライフスタイル (教育、健康、年金、持家) の崩壊です。これは最近開かれたダボス会議でのテーマになっています。
こうしたショッキングな現状から脱却するための解法が「ごちゃまぜ」「既存資源・資本の活用」「地域での経済循環の創出」の3つであり、これができなければ日本は失敗すると考えています。本日はこの3つの解法についてお話ししたいと思います。
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