北欧流『ふつう』暮らしから読み解く環境デザイン
「エコロジカルな生活に向けた北欧の取り組み」
東京電機大学システム工学部デザイン工学科 教授 伊藤俊介氏
2018年7月
(1) 自転車の走る都市ーオアスン地域援
私からはオアスン地域を題材に、エコロジカルな生活をつくりあげるためにどういう取り組みがなされているかをお話します。デンマークのコペンハーゲンと、オアスン海峡対岸のスウェーデン・スコーネ県のマルメ市・ルンド市は一体の都市圏を形成していて、スウェーデン側からコペンハーゲンに通勤している人もいます。デンマークでもスウェーデンでもなく、オアスン地域のお話をいたします。
オアスン地域は平坦な地形で、オアスン地域の都市では自転車利用が非常に盛んです。毎年発表される「バイスクルシティランキング」や「自転車にやさしい街ランキング」でもオアスン地域の都市は常連です。自転車が通勤・通学などの日常的な交通機関となっており、老若男女が日々の足として自転車を使っています。冬にも自転車利用は減りません。
オアスン地域の都市では、自転車は大勢が使う「交通機関」として位置づけられており、自転車通行を便利にする物理的環境整備が着実に行われています。歩道と車道の間に自転車レーンがあるのが標準で自転車道の整備も進んでいます。自転車専用道のショートカットルートを整備して移動距離が短くなるインフラ整備や、信号待ちの間につかまることのできる手すりなど、自転車で走りやすくするための工夫も多くなされています。
さらに物理的環境整備とソフト面の組み合わせが行われています。コペンハーゲンでは自転車通行量の多いルートを選定して、月曜から金曜日の午後3時から6時までは、20km/hで自転車優先レーンをノンストップで走れるように信号が調整されています。マルメ市ではモデルルート「デモンストレーションレーン」で、自転車が接近すると信号が青になるセンサーが設置されています。自転車通行量が分かるカウンターや空気ポンプの設置はコペンハーゲン、マルメ、ルンドだけでなく、デンマーク、スウェーデンでは広く行われています。
詳しいことは、「スウェーデン・スコーネ県におけるモビリティ・マネジメントの取り組みと特徴ールンド市、マルメ市の都市規模・形態と導入の背景からみたハード・ソフト施策の比較」(公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集Vol.50, No.2 2015年10月) をご覧になってください。
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