北欧流『ふつう』暮らしから読み解く環境デザイン
子どもたちの環境
東京理科大学理工学部建築学科 准教授 垣野義典氏
2018年
(1) 出産前からの育児支援
私からは、フィンランドの0歳から中学校にあがる13歳くらいまでの子ども達の環境と、子ども達がどのような生活を送っているのかについてご報告いたします。
フィンランドの子育ては妊娠したときの“ネウボラ”から始まります。“ネウボラ”とは「アドバイス」の意味で、産婦人科に通うこととは異なり、保健師さんや助産師さんの担当者から色々なアドバイスをもらいながら、出産後も家族ぐるみで面倒を見てもらうというものです。“ネウボラ”のやりとりは、50年間保存され、家族の色々な場面で参照されながら、家族のサポートにつながっています。
他にもフィンランドでは、「育児パッケージ」があります。“ネウボラ”での診察を受けたことがエビデンスとなり、子ども生まれたときに、「おめでとう」の意味合いを込めて、育児に必要なグッズがパッケージでもらえるものです。パッケージと現金とどちらかを選ぶことができるのですが、第1子の出産の場合は概ねパッケージが選択されるようです。
日本ではイクメンということが言われていますが、共働きが一般的なフィンランドではお父さんとお母さんが家庭を一緒につくるという意識があり、イクメンという言葉をわざわざつくる必要が無いくらい、お父さんとお母さんが協働して子育てします。
フィンランドでは、第1子が生まれると、毎月100ユーロの手当がもらえ、第2子で105 ユーロ、第3子で135ユーロがもらえます。子供が増えるほど助成金が増えるため、多く出産すると働かなくても生活できるという社会問題がその裏側で起きています。
(2) 都市で子どもを育てる
フィンランドは自然環境がとても豊かで、森林や19万あるといわれる湖が存在します。1つの家に、「うちの湖」と考えられている湖があり、ボート遊び、水泳、釣り、冬にはアイススケートなどが行われています。
・そしてフィンランドの都市には“Leikkipuisto”(Leikki=遊び、puisto=公園) という、児童館と学童保育、都市型公園の機能が合わさった子どもの居場所があります。魅力的な屋内外の空間を有するだけでなく、スタッフが常駐し、子どもを見守ることで、安心して遊ぶことのできる環境が計画されています。ヘルシンキには70か所整備されています。家庭のような雰囲気を大事にしていて、家具も家庭と同じ様なものを使っています。 ・午前中は基本的に乳幼児を連れた親子が多く、午後1時くらいからは下校した子どもたちの放課後クラブの場所になります。そして屋外の公園は地域に利用されています。
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