尾道 映画の舞台として見たまちなみ〜尾道とフィルムコミッション〜

尾道

今回訪れた尾道は大林宣彦監督の「転校生」などの映画作品の舞台として有名である。
昨今はフィルムコミッションを通じて地域活性化を狙う自治体が増えてきた。
(尾道のはこちら参照)
映画作りを地域が場所を提供するだけでなく、ボランティアエキストラ、宿泊場所提供などを通じて支援する。そして、映画がヒットすることで、その地域の知名度が上がる。 尾道も特に突出した産業や観光スポットがあるわけではないが、その知名度は広島の中心街から離れているにもかかわらず高い。
尾道の例でいえば、特徴的なのは、海と山が近いことである。そこで自然と勾配ができ、坂道や階段沿いに住宅が建ち並ぶ風景ができあがる。それが新しいものでなく、昔からの人々の生活が根付いており、どの路地を歩いても生活の気配、人の気配が感じられる。 そしてまちなみとしてはこれといって斬新な建物や、美しい建物があるわけではないが、全体としてまとまりがあり、映画の舞台としては背景となりやすいものとなっている。このように自然と人々の暮らしが一体化したまちなみが尾道の特長といえよう。
また、映画の演出を高める効果のあるまちなみの特徴としては、狭い路地、坂、階段がとにかく多いことである。これらは変化に富んだ背景を生み出し、どこから誰が出てくるかわからない、主人公の背景がどんどん変わっていく、といった効果をうみだし、映画の演出をドラマチックにする。 そして見渡せば広がる海と山の風景、それらが南からの光を受けてきらきらと光る。

以下、写真で尾道の特徴的な景色を紹介する。


(写真1)狭い路地 生活の気配が感じられる。今にも住人が顔を出しそうだ。




写真2 曲がった坂 向こうから誰かが歩いてくるような期待を抱かせる




写真3 階段 向こうから登ってくる人物の表情が段々とあきらかになる




写真4 高台から見下ろした景色 海と水辺の間に建つ家と海と山とのコントラストが美しい




写真5 水辺 西からの光を受けてきらきらと光る水面が美しい


山と海というセットでいえば、似た地形で有名なのは函館、長崎、神戸である。 どこも湾があり、海が穏やかなことからか、3つとも開港の地でもあり、そのおかげで古い洋館などが残り、尾道とはまた違った雰囲気のまちなみをもつが、どの地域も観光地としても魅力的なのが共通している。 また、フィルムコミッションも活発であり、活動実績については以下のURLを参照されたい。おそらく1つは観たことのある映画がみつかるのではないだろうか。

函館
長崎
神戸

多くの映画で共通する印象的な映画の背景としては、坂道、階段、水辺などがあげられるのではないだろうか。坂道と階段は上下の動きがでるのがその要因だと考えられる。 また、水辺は人が何か想いを馳せるシーンなどによく登場する。海にしろ、川にしろ、主人公がだまって立っていても、流れゆくものが背景にあると絵になるのではないだろうか。

自分の住む地域が映画の舞台となるならば、あなたらどこを選ぶだろう?

近所の豪邸?ブランコのある公園?活気のある商店街?

映画といっても、その設定や時代背景も様々である。 それぞれの映画がそれぞれの意図した雰囲気が出せるような地域を撮影地には選ぶだろう。 従って、どんな地域が良い背景となるかはいえない。 それぞれの地域で魅力ある場所を残し、アピールしていくことがフィルムコミッションのみならず、地域の魅力をアピールするのには必要なのではないだろうか。

(文責:中田早耶)