講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


7.後日談1
西田:  お話ししたように妻はお習字教室を一階で行っているのですが、通ってくれている小学校3年生の女の子が、学校の帰りに友達と家に立ち寄ってくれたそうです。忘れ物をした訳でもなく、何か特別用事があった訳でもないようです。何となく、ふらっと会いに来てくれたそうです。妻はこのことをとても喜んで話してくれました。
子どもであれ大人であれ、用事もなくふらっと立ち寄れる場所、で、そこで、何のこともない世間話をする。そんな時間が一日の中にある。そういう場所がまちのなかにいっぱいあれば、世の中悪くなるはずがない。そういうことを強く思う今日この頃です。昔の長屋や町家がそうであったように、何となく家の中が見えるような、人がいる気配を感じられるような、そういう雰囲気が都心の住居には必要だと改めて思いました。
と、もうひとつ、誰かが家に居ないとだめなんですね。専業主婦でも、おばあちゃんでもおじいちゃんでも誰でもいい。世の中のお父さんは昼間普通に外で働いていますから家に居ません。ですから、こういう点では私は全く役に立っていません。


8.後日談2
西田:  家の前にある倉庫に勤めているおじさんが、野菜などを育てることが趣味らしく、少し前にピーナツの苗をくれました。その苗の育て方の指導も時々して下さいます。落花生は小さな黄色い花が咲いて、それが地中に潜っていって、実になります。で、いつ頃収穫すればいいのかと言えば、葉っぱが散った頃だそうです。これは始めて知りました(全て妻から聞いた話です)。
また、同じ方から最近ワケギの球根(種球)を30個ぐらいいただきました。妻がおじさんと一緒に球根を鉢に植えたそうです。妻は一階で書道の練習をしているので、ガラス越しに声をかけるタイミングが分かるそうです。何枚か書いて、休憩している時に声をかけるんでしょう。なんともほほえましい話です。次は、ツタンカーメンエンドウを持ってきて下さるそうです(これも全て妻から聞いた話です)。
私は、食べる係、水をやる係に徹しております。それにしても屋上やベランダ緑化だと、こういう交流は簡単には出来ないと思いました。また、家の前に美しい庭園をバーンとお金をかけて造っても、この手の下町的な交流は生まれないでしょう。家は敷地も含め、周りから色々お節介を焼きたくなるような雰囲気を持っておくことが必要だなあと思う今日この頃です。



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