講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.食を介した家族のコミュニケーション


 4.子供が参加しやすいキッチン10か条

こうした事例に共通することは、親自身が食を楽しんでいて、その姿を子供たちに見せていることです。例えば、落ち葉を掃除するときに、焼き芋を作るために落ち葉を集めようと提案をして、掃除をわくわくする行為に変えてしまう。そうした態度が子供をキッチンに招き入れることになるのではないかと考えます。

もっとも、調査データを見ると夫の関わりが少なく、子供も配膳・食器下げ程度しかやっていないという状況です。実際、50代以上の妻になると食事作りへの参加を娘さんにしか望んでいません。しかし、妻の年齢が下がると、子供の性別に関係なく食事作りなどへの参加を望む傾向が強まります。

こうした現状を踏まえて、子供が参加しやすいキッチン提案を行うための10か条をまとめています。



<子どもが参加しやすいキッチン10か条>
  1. オープンキッチンとする
    (料理に取り組む親の姿や手元を見せる)
  2. 2人以上キッチンに入っても十分なカウンター広さを確保する。
  3. 十分な照度が確保され、手元の作業性と演色性にすぐれていること。
  4. 子どもの手の届く位置に調理道具や食器類の収納スペースがあること。
  5. 適切な加熱調理器を選定する。(ガス/IH)
    ・点火消火の確認。
    ・使用後の残留熱への注意喚起。
  6. 踏台付きのキッチン、あるいは踏台置き場を設ける。
    使用しないときは片付けられる様に工夫する。
  7. 作業スペースから1m以内にコンセントを設ける。
  8. 清掃性がよく、材料をこぼしてもすぐ拭き取れる床材。
  9. 子どもでも処理しやすい高さ・場所にゴミスペースを確保。
  10. 親自身が「食」を楽しみ、子どもの好奇心を尊重し
    達成感が味わえるように、日常的にかかわらせていること。



1番目は料理に取り組む親の姿を見せるということです。嫌がる方もいますが、手元を見せるということが重要ではないかと考えています。2番目は、2人以上キッチンに入っても十分な作業が出来るカウンター広さを確保することです。3番目は十分な照度が確保され、手元の作業性と演色性にすぐれていること。4番目は「子供の手の届く位置に調理道具や食器類の収納スペースがあること」です。これは強調したい項目の一つです。

子どもが小さな時期は安全のためにベビーゲートで完全にシャットアウトしておいて、ある時期がしたら完全に出入り自由にするわけですが、その際子どもの手の届くところに収納がないと自主的にキッチン作業に関われなくなります。5番目は「適切な加熱調理器を選定する」ことです。ガスを採用された場合は点火消火について、IHの場合は使用後の残留熱についての注意喚起が求められます。6番目は「踏み台つきのキッチンあるいは踏み台置き場を設ける」、7番目は「作業スペースから1m以内にコンセントを設ける」。電源コードの長さを調べてみるとハンドミキサーで1.8m、ジューサーミキサーで1.2m、ホットプレートで長くて2mといったところですから、このことは使い勝手に大きく関わってきます。8番目は「清掃性」、9番目が「ゴミスペース」、そして10番目の「親自身が『食』を楽しみ、子供の好奇心を尊重し達成感が味わえるように日常的にかかわらせていること」こそ最も重要であると考えています。キッチンの物理的環境を整えたところで、親の意識が低ければ、子供の参加は望めないのではないでしょうか。



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