東京大学住宅都市再生研究センターについて

 

(3) 東京大学住宅都市再生研究センターの概要説明

(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授小泉秀樹氏より)
 気候変動や少子高齢化、そして先端情報技術の急速な普及で、ライフスタイルが大きく変わっており、住宅市街地や都市の再生に大きな影響を与えつつあります。本センターの運営により、幅広い領域にまたがる各研究分野の境界領域の開拓及び融合を図り、大和ハウス工業様を始めとする産業界とも連携し、現代の住宅・都市再生が抱える諸問題の解決に向けた研究に取り組むことで、住宅・都市再生に資する技術及び制度革新を先導し、住宅制度や政策課題などの解決に資する研究制度を導き出すことを目指しております。
 少子化の問題は都市と非常に密接に関係しており、住宅のつくり方にも影響があると考えております。少子化にどうしたら対処できるのかということを、住宅や都市の観点からアプローチしていきますが、少子化に対処したとしても高齢化の問題は残りますから、高齢社会に対応した新しい住宅市街地と都市のあり方を検討していくことを考えております。さらに気候変動は非常に重要なテーマであり、UrbanEcosystemは生物多様性の問題であり、生物多様性に対処した都市づくりを考えていく必要があります。つまり少子高齢化のことだけ考えているのではなく、気候変動や生物多様性の問題にもうまく対応しながら、それらの問題に包括的に対応することが必要と理解しております。それから最近の世界の大都市が抱える大きな問題ですが、東京においても家賃や住宅の価格がとても上がっております。このAffordable Housingの問題にも併せて対処する必要があると理解しています。そして人口・世帯が減少し、住宅とそれ以外の施設も余ってくるということで、ストックをうまく活用するということが非常に強く求められています。郊外住宅団地がその一つの典型的なモデルになるのではないかと思います。郊外住宅団地をうまく活用することによる、持続可能な都市や地域のあり方を検討していきたいと考えております。
 まずこの会場を管理運営されている東京大学情報学環や、気候変動など世界的課題への観点から未来ビジョン研究センター、先端情報技術を活用するという観点から先端科学技術研究センターといった本学学内の様々な学部・研究科の先生方と連携して、研究活動を展開していきたいと考えております。そして関連企業として、大和ハウス工業様のようなハウジングや都市開発の企業とも連携し、実務的にどう都市がつくられるかということと接点を見出しながら、社会的に成立するソリューションを見出すことを考えております。それだけではなくて、新しいサービスをデザインする上で、スタートアップ支援や、中小企業NPOなどの団体との連携を考えたいと思っています。もちろん政策を立案し、政策を実行するという観点で、国、特に内閣府及び国土交通省や、自治体との密接な連携が重要考えているところでございます。
 我々が検討しているテーマは、もちろん日本が先行して対応している課題でありますが、例えば少子高齢化などは、やがて東アジアや経済成長が早い南アジアの国々にも恐らく共通の問題になります。海外の国々とも連携する必要があり、UN-HABITAT (国連人間居住計画) やOECDなどの国際研究機関とも連携をしていきたいと考えています。IPCC (気候変動に関する政府間パネル) について、実は今年度から第7次報告書に向けた「都市 (Cities)」への気候変動影響についての最初の特別レポートの策定にとりかかっています。この最初の会議が大阪で持たれたのですが、我々も情報をインプットできる成果を上げていきたいと考えており、社会的分野としても住宅市街地や都市がとても注目されているということでもございます。気候変動の主な課題は、業務の発生源であり消費地でもある都市や住宅市街地であります。様々な災害が起こる場所という意味でも住宅市街地や都市が非常に重要というふうに言われています。高齢化は日本がトップランナーですけれども、東アジアの国々がそれを追いかけている状態です。高齢化や出生率低下も都市化と非常に密接な関係があると言われることが世界的な潮流です。少子高齢化は空き家の問題と密接に関係しており、住宅ストックの活用が非常に重要なテーマになってくると捉えております。日本は職場と家庭以外に居場所のない方が世界で最も多い国だと言われています。我々が東京都市部のワーカーに対して行った調査では、本当に職場と住宅地の場所がない方が多いとの結果でした。これらの問題に包括的に対応できる住宅市街地や都市のあり方を検討したいと考えております。
 本センターが進める研究・活動としては、住宅市街地や都市の再生デザインに係る各研究分野を横断し、新たな学術領域を形成すること、住宅都市マネジメント分野の技術革新、住宅都市の再生とマネジメントに必要な政策・制度の設計を考えています。学術領域での成果や技術革新を実施するための政策・制度を我々が立案・構想・設計して、国や自治体による実現を進めることが、最重要なことと考えています。