スマート化とwith/postコロナのまちづくり


【質疑応答・意見交換】

成熟研委員:相鉄いずみ野線沿線や東急田園都市線沿線では、鉄道会社が沿線の地域再生として、歩いて暮らせるまちを進めていますが、一方で上郷ネオポリスのように駅からだいぶ離れた団地ではまちづくりの内容が違ってくると考えられます。またICTについて、高齢者にはなかなか使いにくく、それがMaaS導入の1つのネックになっているのですが、そうしたことに関するお考えをお聞かせください。
小泉教授:上郷ネオポリスのような駅から離れた高台にある高級住宅地は、住宅地の環境の良さで勝負してきた部分があり、地域ではそれなりに価値があるとみられていて、空き物件があると周辺の地域の方が移住して埋まっていく構造があります。この動きをどうやって加速させるかということだと考えています。ライフスタイルが変わり、今までのような戸建て住宅でのまちづくりには限界があるので、コンビニエンスストアを設置して居場所をつくりましたが、そういったものが点在するような街のイメージになるのかなと思っています。公園でも、地域の方が様々な催しをするような舞台の場所など、新しい意味をつくるような取り組みをしてくことで、非常に単調に見えていた戸建て住宅地が彩り豊かな街に変わっていくと思います。移動の問題に関しては、自動運転が普及する中で大きな問題ではなくなると思います。大事なことは、住環境の良さとスマート化やICTを活用できるインフラがあるかどうかだと考えています。ICTはバリアにはならず、むしろバリアをとるものだと考えていて、新しい技術が発達するほど高齢者にも便利になるというのは確かです。LINEの普及率も高く、ICT技術の活用はトライすればできなくはない状況です。スマホは持っていなくてもパソコンを持っている方が多いので、ZOOMも使えます。デジタルデバイスの使い方について、地域の住民同士で支えあいながら、できる人が教える、一緒に楽しむということでカバーできると考えています。スマートモビリティの導入も、普及が進展していけば、ある程度問題が解決するのではと期待しています。
東洋大学水村教授:都市計画の本質が場所と移動の計画と捉えられていたことに対して、今後は、コロナの影響でコミュニケーションを加えたものになるのではないかと考えています。コミュニケーションは対面とICTを利用したリモートの2つに分類されますが、私の親がサ高住や有料老人ホームに入っている経験から、対面で会う事のかけがえのなさも実感されており、バランスよく生活の中に取り組んでいくことが非常に重要と考えています。
コロナ以前、オーストラリア出身の都市計画と公衆衛生を学際的に研究する研究者から、以前は公衆衛生領域での課題は感染症だったけれども、現在では生活不活発病のような生活の中で運動が取り入れられないことが問題であり、歩行を中心に身体を使えるようなまちづくりが必要だというお話を伺いました。ICTにより家で色々なことができるようなっていく中で、高齢者の生活の変化を調べていくと、心身機能低下が深刻な問題でした。健康を保つために、身体と認知能力を使い続けることが必要で、そのための都市の在り方が必要になってくるのではないかと感じています。
小泉教授:ケーススタディのエリアで、住民の方々に、活動や居場所と思える場所がどうコロナで変わったのかアンケート調査をしたところ、エリアによって住民の方の外出行動が減ってしまった場所と、外出行動がむしろ多くなった場所ときれいに別れました。不活発化したところの原因はよく分かっていませんが、モニターしながら外出を促すような取り組みを地域で行う必要があると考えています。コロナは高齢者の認知を落としてしまうリスクが高いので、そこに対応していくことが大事だと考えています。
東洋大学水村教授:まちづくりにおける住民参加が都市計画の課題と思いますが、コロナでの生活を経験して、自分で生きていくことに気をつける当事者性がないと、若い方でもいろいろな機能が低下してしまうと思います。啓発するような要素が、まちの中にこれから顕在していくことが必要です。特に教育を受けていて所得が高い人はスマート化の恩恵を受けていますが、ICTのアクセシビリティの差は、年齢差よりも、所得差による影響の方が大きいと考えています。所得格差が今後も広がっていくと思うので、ICTアクセシビリティの格差が生じないよう、自己啓発の要素が都市のあり方にきちんと顕在化していかないといけないと考えています。
小泉教授:生活の不活発化に対して体を動かすようなツールとしてICTを使えると思っています。例えば、目的地まで歩いていくときにその方にあったルートを考える設定や、自発的意思に基づいて、それぞれの人の状況に合わせてセッティングをするということがあると思います。また、スマート化は健康になる他に、参加の敷居を低くするものとして進めることが1番大事で、ソーシャルインクルージョンのツールとして使うべきと考えています。日本はヨーロッパに比べるとスマホの通信料が高く、所得が低い人は持たない場合もあるため、そうした人が排除される心配があり、そこにどうリーチしていくのかがご指摘の通りであると考えます。