上郷ネオポリスの最新情報

大和ハウス工業営業本部ヒューマンケア事業推進部部長 瓜坂和明

 成熟社会居住研究会では、これまでハウスメーカーが建設を進めてきた郊外住宅団地の再生に取り組んでいます。昨年度は大和ハウス工業株式会社ヒューマンケア事業推進部部長瓜坂和昭氏には、上郷ネオポリス (横浜市栄区) の再生についてのご講演をいただきましたが、今回はその後の「野七里テラス」の開設といった最新情報について、再度瓜坂氏のご講演をいただきました。

(1) 上郷ネオポリス

 上郷ネオポリスは、横浜市栄区の上郷東地区と呼ばれるエリアにあります。上郷東地区は、周辺地域を含め、同じ時期に同じような方々がお住まいになられた郊外住宅地で、全部で11の自治会・町内会があり、約7,000世帯、約12,000人が住んでおられ、高齢化率は35%を超えています。その中で上郷ネオポリスは約900世帯、約2,000名が住んでおられ、高齢化50%近い状態です。
 上郷ネオポリスの現在の住宅ストックを調べますと、昭和47年から49年のころに販売されたプレハブ住宅がそのまま大事に使われているところと外壁塗装などの改修が行われたところが合計で4割、建て替え・リフォームの行われたところが6割でした。
 弊社の上郷ネオポリス再生の取組みは、2014年1月の自治会内の窓口「見守りネットワーク」委員との意見交換から始めました。分譲開始時から40年後のアプローチとなり、最初はリフォームや二世帯住宅の営業のために来ているのかという受け取り方をされていました。これまでのまちとの関わりは住宅のアフターメンテナンスにとどまり、まちの再生という視点で取組んでこなかったことは弊社の反省点でしたが、目的はそういった営業ではなく、このままでは空き家・空き地が増えてくることは容易に想像できることで、21世紀型の新しい魅力のある郊外をつくりたいのだといった弊社の想いをお話しました。上郷ネオポリスは第1種低層住居専用地域の閑静な住宅地で、コンビニも喫茶店もつくられませんでしたが、高齢になった皆様が気軽に立ち寄ってコミュニケーションをとれる“お茶場”が欲しいね、空き家を改修して“お茶場”をつくることができないかというご意見をいただき、検討が始まりました。
 翌年、2015年には自治会内に「上郷ネオポリスまちづくり委員会」が発足しました。自治会役員の任期は1年で終わってしまうのですが、それではまちづくりはできません。期限の定まっていないメンバーによるまちづくり検討を続けるために、15人のまちづくり委員会がつくられました。そして2016年には自治会と弊社で「上郷ネオポリスにおける持続可能なまちづくりに関する協定書」を締結し、まちづくりを一緒に進めて行こうということになりました。さらに同年にはまちづくり委員会・弊社・東京大学・明治大学・高齢者住宅推進機構 (現在は高齢者住宅協会)による「上郷ネオポリスまちづくり協議会」が発足し、月1回の協議会開催が現在も行われています。
 
 2017年には第1回の全戸アンケート調査を行いましたが、まちづくり委員会の尽力と、居住者の方々の関心が高まったことで、88%という高い回収率となりました。アンケートではマークチェックによる回答だけでなく、それぞれが自由にお考えを書き込んでくださいとの欄を設けましたが、回答者の4人に1人が、それぞれの思いのたけをご記入されました。