積水ハウス(株) 設計部東京設計室 部長 上井一哉
成熟社会居住研究会では、これまでハウスメーカーが建設してきた郊外型戸建住宅地の再生について研究を行っています。今回は郊外型戸建て住宅地の分譲事業に30年以上にわたって携わってこられた積水ハウス株式会社の上井一哉氏に「まちづくりと高齢化」についてお話を伺いました。
私は主に郊外型戸建住宅地の分譲事業に30年以上携わっておりました。高齢者事業については、小規模多機能やグループホームの設計や、デンマークの福祉施設についての研究などに携わったことがあります。本日はまちづくりと高齢化というテーマでお話したいと思います。
(1) 築25〜43年 高齢化する郊外型戸建住宅地
郊外型戸建住宅地は規模の大きく、高齢化が問題になっています。私どもが研究を行ってきた3つの団地についてご紹介します。
①コモアしおつ(積水ハウス)
「コモアしおつ」は、JR四方津駅から斜行エレベーターでアクセスするニュータウンです。バブル崩壊直後くらいに販売を始め、現在も販売中です。初期販売したエリアの高齢化率が18%で、販売中のエリアの高齢化は8.5%、団地全体で平均13%です。あまり高齢化は進んでいませんが、サ高住や住宅型有料老人ホームが自然発生的に建設されています。
弊社では現在、国交省のスマートウェルネス住宅等推進モデル事業の助成をいただき、断熱改修と高齢者健康増進住宅づくりをかけあわせた研究を行っています。これはまだ試行段階というところです。
②柏ビレジ(東急不動産)
「柏ビレジ」は、まち開き当時、最寄りのJR常磐線柏駅からも遠く離れていましたが、現在はTXの駅からバスでアクセスできるまちです。郊外まちづくりの古典的な事例で、これまで何度も見学に伺いましたが、最近では東大柏の葉キャンパスに近い住宅地ということで、新領域創成科学研究科との協働研究を、柏ビレジの居住者の皆様と一緒に行わせていただいています。
③桜ケ丘ハイツ(不二企業)
3000区画を超える住宅地で、築43年経過しています。小中高の学校がありますが、小学校が1校、スーパーが1軒であり、この規模にしてはやや少ないかなと思います。
(2) 建築家宮脇檀さんの言葉

実はこの3つの住宅地は全て、建築家宮脇檀さんがデザインされたものです。宮脇さんは大学時代から集落を研究されるなど、まちづくりに知見のあるかたで、「コモンで街をつくる」といった著書をあらわしておられます。まちづくりに関して、たくさんのことを教えていただきました。
宮脇さんは、1970年代の『まちなみ』があまり話題にされなかった頃、桜ケ丘ハイツで居住者に配布された冊子で次の様なことを述べられています。
- 生きている道:道は生活の場であり、生きていなくてはならない。
- 共有の緑を持つ:私有地でありながら、共有の緑地である。
- 集まりの場をもつ:生き生きと人が溢れるような、そんな広場を無数にちりばめたいと思う。
- 種々の施設を混ぜる:そうした小さな施設類に支えられ、支えながら私たちは生きているのだ。